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2013年3月 7日 (木)

村上龍の恥ずかしさとうまさ

最近、小説づいている。たぶんこの2カ月ほど大学で採点や卒論審査や入試などで、ストレスの多い日々を送っているからかもしれない。『何者』に続いて、村上龍の『55歳からのハローライフ』を読んだ。

村上龍という人はなぜか恥ずかしい。『限りなく透明に近いブルー』が芥川賞を取った時、九州の中学生の私はすぐに単行本を買った。それ以来、すべてではないがかなり読んでいる。出たがりの言動も含めて、この小説家は「田舎出身の文学成り上がり兄ちゃん」のような気がして恥ずかしい。同じ九州出身のせいかもしれないが。

『55歳からのハローライフ』も、また同様にどこか恥ずかしい。村上龍とはかけ離れた生活をしている60前後の迷える同世代を、見てきたように巧みに描いているからだ。その通俗性ゆえに読みやすく、どんどん読んでしまう。

描かれているのは5つの物語。

「結婚相談所」は、定年退職して家に居続ける夫と別れて、結婚相談所に通う女性を描く。

「空を飛ぶ夢をもう一度」は、出版社をリストラされた54歳の男が、警備員の仕事をしながら、ホームレスになたt小学校の時の友人に出会う話。

「キャンピングカー」は、早期退職をした営業畑の男が、キャンピングカーで日本中を旅しようと妻に提案して嫌がられる話。

「ペットロス」は、広告代理店を定年退職した男の妻が、犬を飼うことにのめりこみ、その死に苦しむという展開。

「トラベルヘルパー」は、仕事が少なくなった60過ぎのトラックの運転手が、古本屋で会った古風の女性を好きになる話。

いずれも、60前後の仕事を失った男と、そばにいる女が描かれる。私には女性を主人公にした「結婚相談所」と「ペットロス」が特におもしろかった。出てくる男性はどうしても現代日本社会のカリカチュアだが、女性にはもっとリアリティがあり、同感できるところがあった。私がおばさん化しているからかもしれないが。

それにしても、村上龍は恥ずかしくてうまい。

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