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2013年3月19日 (火)

シネパトスで『インターミッション』を見る

現在、銀座シネパトスで上映中の樋口尚文監督『インターミッション』を見た。この映画館は3月末で閉鎖されるが、この映画はここで最後に見せるために作られたという珍しい作品だ。当然舞台はこの映画館。

中身は、この映画館を訪れる14組の客の会話だ。映画館主は秋吉久美子で、その若い夫が染谷将太。客は小山明子、夏樹陽子、竹中直人、大島葉子、佐野史郎など大物がどんどん出てくる。あるいは大野しげひさ、畑中葉子、ひし美ゆり子といったかつて有名だった俳優も多い。そして極めつけは『インターミッション』の「インターミッション」(休憩)に出てくる香川京子へのインタビュー。

ところが、およそ映画らしくない。この設定ならもう少し脚本を練ってほしいし、もっと演出に工夫が欲しい。しかし、どこかおもしろい。まず、秋吉久美子がいい。60歳近いはずだが、白いシャツの向こうからヤバイ色気が匂ってくる。昔、この映画館で秋吉久美子が出ている駄作(題名を思い出せない)を見ていたら、藤田敏八監督が見に来ていたのを思い出した。

次におもしろかったのは、映画の中で地下鉄の音を出していたところ。あの映画館は見ていると5分ごとくらいに地下鉄の音が聞こえる。それが映画の中の音か本当の音かわからなくなるほど、よくできた音響だった。

次は映画のタイトルが「今日の映画」として次々に出てくるところ。ロメールの『クレールの膝』だったり、ベルトルッチの『革命前夜』だったり、リヴェットの『王手飛車取り』だったり、相当渋い。ほかにもジョセフ・H・ルイスの『拳銃魔』とかヴェンダースの『ことの次第』、ドライヤーの『奇跡』、ダニエル・シュミットの『ラ・パロマ』など。溝口の『狂乱の女師匠』のように、現存しないが戦前にフランスで上映されたためにフランスにあるのではと噂されるタイトルもある。

題名だけで映像が写るわけでもないので、単にシネフィルのスノッブな趣味を見せているだけなのだが、そのバカバカしさがいい。私の世代の映画マニアをからかっているみたいだし。あの映画館で『革命前夜』を見たことを、ふと思い出した。

地下鉄の音と隣の居酒屋の匂いがする映画館ともお別れ。あの映画館をそのまわりと共に映像に残しただけでも意味のある映画だった。その後私は、梅本洋一さんの通夜に行った。時は過ぎ行く。

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