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2013年3月 2日 (土)

ベルトルッチの新作に思う

例外はあるが、最近の映画監督の最盛期は10年間くらいだと思う。かつてあんなに楽しみにしていた監督が、どうしてこんな映画を、と思うことが多い。私にとってベルナルド・ベルトルッチはその代表だろう。

大学生の時最初に見たのは『暗殺のオペラ』(70)だったが、それから『1900年』(76)に圧倒され、『革命前夜』(64)、『暗殺の森』(70)と追いかけた。イタリア文化会館などの上映も含めると、全作品を見ている。違う、と思ったのは『ラストエンペラー』(87)からか。『リトル・ブッダ』(93)からは、本当に焼きが回ったかと思った。それでも見続けた。

だから4月に新作『孤独な天使たち』(原題:Io e te=僕と君)が公開されると聞いた時は、やはりだめだろうなと思った。ましてや最近は、車椅子に乗った姿を黒澤明をめぐるドキュメンタリーなどで見ている。

それでも早く見たいと思って試写に行った。結果から言うと、最近の作品では一番いい。ベルトルッチらしい艶のある映像があり、若者たちの素直な感情表現があった。

物語は、14歳の少年ロレンツォが、学校のスキー旅行に行かずに、こっそりアパートの地下室で一週間暮らすというもの。そこに突然異母姉妹で年上のオリヴィアが現れて、居座る。映画はほぼこの2人が閉じこもる地下室の中で展開する。

最初に白と赤の文字でクレジットが出てきただけで、なぜか嬉しくなった。少年の母親を演じるのは、『輝ける青春』でニコラの妻でテロリストになったソニヤ・ベルガマスコというのも泣ける。どこかぎこちない、同じ演技だ。最初に少年の精神科医が車椅子で現れた時は、監督かと思ってしまった。

母親との夕食のシーンの黄色い光や入院中の祖母を見舞いに行く時の病室の色合い。そして万華鏡のように光が差し込む地下室の部屋。ロレンツォやオリヴィアの瑞々しい肉体の輝き。ニキビ面の少年ロレンツォは、人を素直に信じて、すぐに好きになる。

たわいない内容だが、監督の青春への想いが伝わってくる、心が温まる小品。

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