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2013年4月23日 (火)

85歳のジャンヌ・モローを見て

この夏公開のフランス映画『クロワッサンで朝食を』を見た。ちょっと安易な感じのする邦題だが、原題はUne estonienne a Paris (パリのエストニア女性)でこれまた別の意味でシンプル。85歳のジャンヌ・モローが主演だ。

冒頭、どこかの田舎の夜を1人の中年女性が歩いている。彼女が夫や母に苦しんでいる姿が写る。知らない言葉が話されているから、これがエストニアかと思っていると、その女性は母の死後パリに家政婦として働きに行く。

エストニアの女性アンヌがパリで働くのは、ジャンヌ・モロー演じる老女フリーダの家。絵に描いたようなパリの金持ち女性のフリーダは、アンヌに冷たい。アンヌを手配したのはカフェの経営者ステファンだが、ステファンにはフリーダとの過去があった。

3人の心の動き以外は、大した物語はない。演出としてもフツー。それでもこの映画がどこかひっかかるのは、3人のシンプルな演技の中に人間の真実が垣間見えるからだ。

ジャンヌ・モローは普段もこうではないかと思わせるくらい、自然な存在感を見せる。わがままだが、可愛いところのある老婆。パリに出てきてフリーダの世話をする合間に散歩をするアンヌの静かな表情とその変化も、魅力的だ。だんだんお洒落になってゆく描写もうまい。中年男ステファンのダメ男のような生き方も、どこか愛すべきところがある。

アンヌが1人で散歩するパリは、エッフェル塔だったり、凱旋門だったり、まさに外国人のパリで、ちょっと懐かしかった。パリはエストニア人にとっても憧れの場所だったのだ。

そういえば「パリのエストニア女性」という原題は、アンヌのことだと思って見ていたが、フリーダもエストニア出身というから、むしろフリーダのことかもしれない。彼女がエストニア人たちと話す場面で一言くらいエストニア語を話せばよかったのに。あるいは彼女がなぜ金持ちになったかも、どこかでわからせて欲しかった。

それでも85歳のジャンヌ・モローを見て、得した気分になった。

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