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2013年4月25日 (木)

やはり大森立嗣の映画は違う

最近見る試写は、見どころがないわけではないが、どこかいま一つの作品が多かった。そんな時に6月22日公開の大森立嗣監督の『さよなら渓谷』を見て、やはり彼の映画は違うと思った。

最初に暗闇で抱き合う2人が出てくる。その結びつきの強さは、ただ事ではなさそうだ。入口を叩く音。隣の女が宅配の受け取りを依頼するが、緑が広がる外にはマスコミが大勢。その数分を見ただけで、濃密な映画の空間がどろりと溶け出す。

物語は真木よう子と大西信満演じる夫婦が、隣りの女の幼児殺害事件に巻き込まれるうちに、とんでもない過去が出てくるというもの。それを追う週刊誌記者の生き方や妻との関係もそこに折り重なる。

この監督のこれまでのすべての映画がそうであるように、物語はわかりにくい。というよりあえてあちこちにゴツゴツと抵抗感を作った感じの展開だ。大森南朋演じる週刊誌記者の物語は必要かとか、井浦新のDV夫は出てこなくなくても話だけでよかったのではないかとか、見ながら考える。

それでもその映像に圧倒される。2人の住む奥多摩の風景がいい。、彼らが道をとぼとぼと歩き、セミが鳴き、森が写るだけで、世を捨てたような彼らの人生が湧きあがる。

彼らの過去に遡った北陸のシーンはさらにいい。田舎の一本道を歩く2人。坂を下ると、右側に列車が通る。大森監督はこれまでの作品もそうだが、道を歩くシーンが抜群だ。

そして何より真木よう子が強烈な存在感を残す。彼女の過去と現在の表情、体の動きの一つ一つ、その服装の変化に目が吸い付いてしまった。最後の赤いTシャツの印象的なこと。

週刊誌記者たちは取材の結果2人の過去の結びつきをが知って驚くが、実はわたしも「えっ」と声が出そうになった。それくらいびっくりの展開だった。『ぼっちゃん』といい、この映画といい、大森立嗣は現在最も勢いのある監督ではないか。

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映画『さよなら渓谷』は、レイプ事件の被害者と加害者でありながら現在は同居している男女の複雑な心理を描いた吉田修一の同名小説を、大森立嗣監督が映画化した。主演で映画化企画者の一人でもある大西信満さんに作品についてお話を伺った。 【Page1/4】2013年6月22日(土)より全国ロードショー... [続きを読む]

受信: 2013年6月16日 (日) 16時40分

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