「おどろきの中国」か
橋爪大三郎、大澤真幸、宮台真司の『おどろきの中国』を読んだ。実は読んだのは一月ほど前だが、あまりピンと来なくて放っていた。今朝の「朝日」のGLOBEで「中華世界 その求心力と遠心力」と題した中国人の特集があって、思い出した次第。
GLOBEの方は、世界に広がる中国人社会がテーマ。いわゆる華僑という存在だが、世界に広がる華人人口と貿易額のグラフが一番おもしろかった。日本に中国人は67万人いるが、米国には416万人もいる。アジア各地もインドネシアの801万人を筆頭に日本より一桁多い。
ヨーロッパは少ないが、フランスで40万、イタリアで20万。あわせて日本と同じくらいだから、人口を考えたら多いか。ベネチアのリド島にも中華料理店があったことを思い出した。
しかし中国への輸出額は、1946億ドルで日本が一番多い。大半の国では対中国は輸入が多いが、日本は輸出の方が多い。中国人が不買運動を起こしたら、一番困るのは日本なのは間違いない。
さて『おどろきの中国』の何が不満だったかというと、座談会形式できちんと結論が出ないところだ。3人の社会学者のうち橋爪が中国通らしく、彼にガイドされて中国を見てきた大澤と宮台が聞いて橋爪が答える形だが、みんなが自分の鋭さを見せようとしてポイントがすり替わる。
それでも興味深い指摘はあちこちに出てくる。以下はその一部。
中国はEUみたいなもので、同じ漢字を地方によって読み方が違う。ただし書かれた漢字は伝わる絵文字のようなもの。
日本が近代化=西洋化に成功したのは、根本となる経典がないから。イスラムもインドも中国もそれがあるから遅れた。
中国のエリートには「個人档案」というものがある。大学入学すると作られて成績や教師のコメントに始まって、働きはじめると上司の評価が書きこまれる。国民党の親戚がいるとか、恋人と問題を起こしたとかまで載る。これは自分では見られないらしいが、ちょっと怖い。
後半は中国が日本を嫌いな理由が説明される。日本が「アジアの盟主」みたいな態度を取るのは中国は許せない。儒教の観点から中国が上なのは当たり前で、次が朝鮮で日本はその下。橋爪は言う。「日本の側に中国コンプレックスがあると、日中関係は安定するんです、江戸時代はそうだった」。
最後はここまで言うかというくらいの日本否定論になるが、今日はここまで。
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