« 『アンコール‼』の老人と音楽 | トップページ | 永田雅一の謎 »

2013年4月13日 (土)

『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』を読む

有馬哲夫の新書『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』を読んだ。同じ著者の『日本テレビとCIA』は、読売のオーナーで日テレを作った正力松太郎がいかにCIAに操られていたかを、CIAの公開文書を使って論じたもので、目が覚める思いがした記憶がある。あの児玉誉士夫もそうなのかと、興味が湧いた。

児玉誉士夫と言えば、私にはロッキード事件で急に表に出てきた政界のフィクサーだ。当時、小佐野賢治と共に政治を操る怪しい黒幕という印象だった。この本を読んで、児玉がもっと大きな存在だったということを実感した。著者が書いているように、戦後最大の政治プロデューサーというべきか。

彼の活動は戦時中から始まっている。上海に「児玉機関」を作り、物資調達と同時にインテリジェンス工作をする。特にレアメタルの調達王として知られたことが、戦後CIAが頼るきっかけになる。

戦後、何と東久邇内閣の参与に抜擢されるが、A級戦犯として巣鴨に拘留され、48年に釈放。このあたりから、児玉を利用しようとするCIAの影が見える。日本や台湾の共産化を防ぐために活動を始め、「台湾義勇軍」を組織する。

正力が日本テレビを立ち上げるにあたっても、CIAの金が児玉経由で流れている。その次は鳩山一郎の総理就任を支える。ところが鳩山は再軍備化や自主防衛でなく、ソ連との国交回復を掲げるので、岸信介を擁立。それからは戦闘機選定でロッキードの代理人となる。あるいは日韓国交正常化のパイプを果たす。

この本で一番おもしろいのは、後半、中曽根康弘が自主防衛を主張し、国産哨戒機の導入を唱えながら、結局はCIAやアメリカ航空業界の圧力と賄賂に負けて、ロッキードなどの米国機の輸入に傾くところ。すべて児玉がかかわり、それはロッキード事件まで続く。

結局、児玉はロッキード事件で有罪になるが、病気で拘留は免れ、中曽根は無傷で首相になる。丸紅ルートや全日空ルートよりも最も重要な児玉ルートは、闇に葬られる。「アメリカの不始末から起こったロッキード事件は、日本政界の複雑な動きを経るうちに、不思議なことに、巨額の防衛装備の輸入を日本に迫るアメリカ側に最大に利用され、中曽根と児玉の自主防衛論を後退させる結果に終わった」。

何と暗澹たる結末だが、現在のTPPの交渉を思わせる。

|

« 『アンコール‼』の老人と音楽 | トップページ | 永田雅一の謎 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/57155913

この記事へのトラックバック一覧です: 『児玉誉士夫 巨魁の昭和史』を読む:

« 『アンコール‼』の老人と音楽 | トップページ | 永田雅一の謎 »