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2013年4月24日 (水)

『インポッシブル』に見る災害の描き方

初夏に公開される映画『インポッシブル』を見た。昨年の映画だが、2004年のスマトラ沖地震で起きた実話をもとにしたものだ。海岸から迫りくる津波の迫力ある映像には、どうしても東北の大震災を考えざるをえないが、映画としてはよくできている。

見に行ったのは、ナオミ・ワッツがこの映画でアカデミー賞とゴールデングローブ賞の主演女優賞にノミネートされているほか、スペインのゴヤ賞14部門ノミネートを始めとして、無数の受賞、ノミネート歴が試写状にもチラシにも列挙されていたから。

もう1人の主演がイアン・マクレガーというメジャー感に加えて、監督はJ・A・バヨナというスペイン人で、製作もスペインで英語の映画。何となく今風の組み合わせに興味を持った。

物語はタイでバカンスを楽しむ英語圏の5人家族に大津波が訪れて、一家が散り散りになるというもの。海から突然津波がやってきて、一挙に海岸からプール、そしてホテルを飲み込む映像には、息を飲む。東北大震災の時にテレビで見た映像を、当事者から見たらこうかと思う。その後の放浪から救助に至る悲惨な情景も、見ながら東北のことばかり考えた。

悲惨な状況を生きぬく家族を、手持ちカメラのクロース・アップで長回しで撮っているのもいい。まるでその場に居合わせているような臨場感がある。津波に呑まれた後の廃墟のような街の風景や戦場のような病院の様子も、丁寧によく描けていると思う。

それでも気になったのは、これがタイのリゾート地で遊ぶ欧米の金持ちたちの悲劇という点だ。イアン・マクレガー演じる父親はおそらくアメリカ人で(それも明示されない)、日本で仕事をしている。妻は元医者で今は子育てに専念中。マクレガーがスマホで連絡を取っている日本人の名前が「ユニオシ」と聞いて、『ティファニーで朝食を』の出っ歯にメガネのありえない日本人の名前をそのまま使っている無神経に驚いた。

現地の人々の描き方も、いかにも野蛮人という感じで気になる。もっとも驚いたのはラストに「チューリッヒ保険」が用意するプライベートジェットで家族が救出される点だ。そういえば、最初にホテルに着いた時に「チューリッヒ」のタグが一瞬写るが、私はスイスに住む家族かと思った。

というわけで、この映画を素直に楽しむことはできなかった。これなら上映中止になっている中国映画『唐山大地震』の方がずっといい。もう公開してもいいのではないか。

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