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2013年4月 8日 (月)

もう一つのブルーメンフェルド

恵比寿の東京都写真美術館で「アーウィン・ブルーメンフェルド 美の秘密」展を見た。彼の写真は1950年代の『ヴォーグ』や『ハーパス・バザール』などの雑誌を飾った何枚かの写真が記憶にあった。白をバックに、美女の顔の一部を大胆にカットしたあれだ。

私でも知っているくらいだから有名な写真家だが、個展は日本で初めてという。見て驚いた。50年代以降の派手な写真の前に、1930年代の白黒の前衛的な写真がたくさんあったからだ。

一瞬、マン・レイやブラッサイかと思うようなソラリゼーションや多重露光やコラージュ。とりわけ一連の布をまとった裸体の写真は強烈だった。最後に自薦のベスト100点が展示されているが、2枚組の実験的作品ばかり。

こんな白黒の実験があって、ファッショナブルなアメリカ雑誌のポップな展開があったことがよくわかる。展覧会は最初に派手なカラーの雑誌写真を見せて、雑誌そのものも見せる。それから30年代から40年代の白黒のヴィンテージプリントが展開する。人間の身体の形の不思議さを見せてくれる写真の数々に惚れ惚れした。エッフェル塔の上でポーズをする美女の一連の写真もこの人だったのか。

最後にブルーメンフェルドの略歴を読んでまた驚く。ベルリン生まれのユダヤ人で、アムステルダムからパリに移住し、ニューヨークに向かう。何だフリッツ・ラングとほぼ同じではないか。あるいは同じベルリン生まれでパリで活躍し、アメリカに行く前に亡くなったベンヤミンとか各地を逃げ回ったブレヒトとかみんな1890年代生まれのドイツ系亡命者たちだ。

雑誌の表紙の展示で、「軍務に就く女性たち」といった戦争協力のテーマが数点あったのも興味深かった。できたら雑誌の中を見たかった。それからそれぞれのアートディレクターの名前も明示してほしい。文字組などおもしろいので。

「ブルーメンフェルド展」は5月6日まで。大半が遺族から出た写真なので、この機会を逃すともう見られないだろう。

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