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2013年4月 4日 (木)

『イノセント・ガーデン』の底知れぬ恐ろしさ

5月31日公開のパク・チャヌク監督新作『イノセント・ガーデン』を見た。夫が亡くなって別の男性が現れ、母と娘の反目が始まるという設定は、昨日書いた『パパの木』とうり二つ。そのうえ、英語圏以外の監督が英語で撮るという点も同じ。ところが展開は正反対だった。

『パパの木』が、父の死をきっかけに家族の愛情と自然をテーマに描くかちっと作られたメロドラマだとすると、こちらはその死をきっかけに隠された真実が次々と露呈する、一種のホラーだった。

登場人物が最初からみんなヘンだ。いつも白と黒のサドルシューズを履く娘のインディア・ストーカー(何という名前!)を演じるのはミア・ワシコウスカ。この娘と全く仲良くなれない母親は、年を取って妖しい魅力が加わったニコール・キッドマン。二人ともいかにも神経質そうで折り合わない。

そこに現れる叔父のチャーリーは若くてハンサムだが、これまたどこか異常だ。そもそもインディアは叔父がいるなんてしらなかった。家政婦のマーガリック夫人はいつの間にか姿を消し、母親はチャーリーと仲良くなる。

そこに大叔母のジンが現れるが、やはり居心地が悪そうに泊まっていないホテルの名を告げて去ってゆく。

チャーリーが現れた時に、その細面の美形と異常さに『サイコ』のアンソニー・パーキンスを思い出した。インディアのシャワーのシーンもあったし。そういえば、ニコール・キッドマンのメイクや髪型もどこか40年代や50年代のハリウッドみたいだ。だが内容からしたら、同じヒッチコックで謎の叔父が現れる『疑惑の影』だろう。叔父役のジョセフ・コットンの名前もチャーリーだし。

しかし映画の展開は、ヒッチコックより神経質でセンセーショナルだ。カメラは室内を揺れ、人々は奇妙なアングルで写る。時おり挟み込まれる過去のシーンが次第に増えてくる。インディアは小さい頃からのサドル・シューズをベッドの周りにぐるりと並べたり、彼女の股の中に小さな虫が入っていったりといった細部も怖い。オペラ『イル・トロバトーレ』の一節や、メトロノーム、あるいはフィリップ・グラスの音楽に合せて母親と娘の性的渇望が増大し、チャーリーの異常さと衝突する展開は、見ていて息が詰まった。

こんな映画をアメリカで撮るなんて、韓国の監督はすごい。日本の監督で誰がこんなことをできるだろうか。

個人的には、チャーリーに料理を教えたというマダム・ジュカンを演じたジュディット・ゴドレーシュがおばさんになっていたのが感慨深かった。ブノア・ジャコの『デザンシャンテ』なんて傑作だったけど。

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3日のことですが、映画「イノセント・ガーデン」を鑑賞しました。 少女インディアは自身の誕生日に愛していた父親が交通事故で亡くなってしまう 母と葬儀に参列すると行方不明だった叔父チャーリーが姿を現し、彼と屋敷で暮らすことになるのだが・・・ 韓国の鬼才パク・...... [続きを読む]

受信: 2013年6月11日 (火) 21時01分

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