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2013年5月29日 (水)

「In the House」に見る才人オゾン

来月後半のフランス映画祭の試写に行ってみた。見たのはオープニング上映というフランソワ・オゾン監督の「In the House」(邦題未定)。さすが才人オゾンを感じさせる作品だった。

物語は、高校の国語教師ジェルマンが、作文の課題で優秀な生徒クロードを見つけて、個人指導を始めるというもの。極めて地味な内容のはずなのに、これが破天荒な展開を見せる。というより、映画の語りそのものが揺らぎ、現実と小説が入り混じる。

高校生の小説はいわば私小説で、教師が文章を読みだすと、クロードの声がナレーションのように響く。するとその文章通り実践するクロードが画面に写る。クロードは友人のラファに数学を教えるが、それが彼の父母にも次第に波紋を起こす。

クロードはラファの父親の信頼を得て、ラファに嫉妬されたり、あるいはラファの母親と仲良くなり、とうとうキスに及んだり。それらの描写の途中に、その文章を読むジェルマンや妻のジャンヌが写る。しまいにはジェルマンはクロードの小説の世界に出てきたりする。

さらにはクロードの小説は、ジェルマンとその妻の私生活にまで入り込む。それを読みながら騒ぐジェルマンとその妻。

前半は小説のナレーションが滔々と続くが、後半はむしろ小説世界が奇想天外に広がる。いったい何の映画なのかとさんざん見るものを右往左往させた後に、しょせん小説も映画もフィクションだと言わんばかりに、映画はすとんと終わる。やられた。

才人オゾンは『しあわせの雨傘』や『8人の女たち』のように一般受けする映画も作れば、『焼け石に水』や『エンジェル』のように地味な映画も作る。今回はまん中あたりか。しかしそこに共通しているのは実験精神で、いつも映画がそのものと戯れている。

どうでもいいが、私も学生の文章をいつも添削しているので、ちょっと身につまされた。特に学生から告発されて問題になるあたりなんか、ちょっと怖い。さてこの映画は、フランス映画祭後、劇場公開は今秋。

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