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2013年5月31日 (金)

またまたフランス映画祭試写

昨日もフランス映画祭の試写で2本見た。クロード・ミレール監督の『テレーズ・デスケルウ』とカトリーヌ・コルシーニ監督の『黒いスーツを着た男』。どちらも見ごたえのある秀作だった。

クロード・ミレール監督は、昨日書いたように1970年代にデビューしたポスト・ヌーヴェル・ヴァーグ世代で、日本には来ていない作品が多い。彼は昨年4月に亡くなったので、今回の『テレーズ・デスケルウ』が遺作となる。

原作はクロード・モーリアックで、かつては文学青年の必読書だった。映画は原作を淡々と再現する。1920年代、ボルドー近郊の地主の娘テレーズは、近くの地主の息子と何の疑問もなく結婚する。そこから始まる苦悩と殺意。

テレーズの行動の理由も現場も見せず、最後まで謎めいたままに映画は進む。気まずさが画面を支配し、気がつくと人生そのもののような普遍性が広がっている。必要最低限のシーンだけを見せる禁欲的な演出が、当時を細部に至るまで再現した美術や丁寧な撮影とあいまって、異様なまでの迫力を生んでいる。これは劇場公開すべき作品。

『黒いスーツを着た男』は8月31日から劇場公開が決まっているだけあって、ずっとわかりやすい。誤って人を轢いてしまった男と、それを目撃した女、そして轢かれた男の妻の3人の若者の運命が交錯してゆく過程をサスペンス・タッチで描いている。

原題はTrois mondes(三つの世界)で、社長令嬢との結婚を10日後に控えた幸福の絶頂の男と、恋人との間に子供ができたのに踏み切れない医学生の女と、フランスに違法滞在しているモルドヴァ人の女の世界が描かれる。全く異なる階層のフランス社会のぞれぞれをリアルに見せながらも、次はどうなるのかとたたみ掛けるような娯楽性も持っている。

プレス資料には、主演のラファエル・ペルソナーズが「アラン・ドロンの再来」と書かれていた。確かに似ているが、アラン・ドロンのような危険なまでの完璧な美しさはない。その分、苦悩と優しさを内側に抱え込んだ、今の若者の等身大としての魅力は十分にある。フランス映画祭で来日するらしいが、日本では人気が出るのではないか。

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