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2013年5月28日 (火)

『くちづけ』の泣かせ具合

竹中直人の頬に貫地谷しほりがキスをしているベタなチラシを見て、映画『くちづけ』は見たくないと思っていた。そのうえ、知的障碍者を扱っているというから、だいたい想像がつく。ところが見てきた友人が絶賛したので、空いた時間に見に行った。これが予想以上におもしろかった。

最初に大きな家が出てきて、障碍者を演じる俳優たちがハイテンポで話し始めた時、ちょっと引いてしまった。ところが少し経つと、その即興のようなユーモアの連なりに魅了されてゆく。

そこに竹中直人がやってきてこれまた最初はどうかと思ったが、「こちん」の話をホームの住民に持ちかけたあたりから、段々乗せられてゆく。そしてうーやん(宅間孝行)が竹中を妹の婚約者と勘違いするあたりから、はまってしまう。

物語は、竹中演じる元漫画家が、障害者の娘マコ(貫地谷しほり)を連れてグループホームにやってきて過ごす半年ほどを描く。3人の障碍者の住民に、親切な医者家族、近所の警官、元漫画家の編集者などが入り混じり、すべてがその家の中で展開する。

とりわけマコと惹かれあう、うーやんとのやり取りが中心となる。そのうえ、彼の妹は結婚を控えていたのに、兄が原因で潰れてしまう。それを知った時のうーやんの悲しみ。

見ていて何度も涙が出てしまった。中盤からちょっと泣かせすぎかなと思い始めると、いささか過剰な音楽が気になり出す。そうすると、長回しとアップを巧みに組み合わせる編集の巧みさも気になった。

だから竹中と貫地谷のまわりをカメラが何回転か回った時も、どこか醒めていた。うますぎるとおもったからだ。それでも、終わりに元漫画家が最後に書いた新作漫画が披露され、娘とのスライドショーが始まると、また泣いてしまった。

パンフレットを買ってみたら、監督の堤幸彦は5台のカメラを使って2週間で撮ったという。即興的なテンポの良さは、四方からの無数のカットを組み合わせてできたものかと悟った。それゆえのあざとさも含めて。

何といっても、うーやんを演じる宅間孝行が抜群だ。彼の存在が全体を引っ張ってゆく。そして竹中の老練な演技が厚みを増す。パンフによれば、もともと宅間が自ら脚本を書いて演じた芝居がもとになっているという。その芝居らしさをあえて生かした堤の演出はさすがだ。

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