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2013年5月 8日 (水)

映画『図書館戦争』の問題点

公開中の映画『図書館戦争』を見た。この映画は勤務先の大学の図書館でポスターを見た時から気になっていた。図書館と戦争という、全く結びつかないものの組み合わせがいい。その後、数年前から小説に始まってマンガやアニメまであることを知って驚いた。

映画は、10分たったら出たいと思ったほどつまらなかった。嫌いな映画を「テレビみたい」と書くとテレビ好きの友人に叱られるが、すべての画面に振り仮名がついているような、誰にでもわかるように作られた「お茶の間」向けの演出だ。

映画は近未来SFで、有害図書を書店から排除する法律が通過し、図書館がそれに対抗するというもの。それがなぜか警察と図書隊という自衛組織の銃撃戦となる。

甘々で大味な演出を別にして、一番ダメだと思ったのは、あれだけセットにお金がかかっているのに本に火をつけて焼くシーンがわずかしか映っていないことである。本を焼くというのは、レイ・ブラッドベリの傑作SF『華氏451度』やトリュフォーの映画化作品を挙げるまでもなく、文明自体を否定するような野蛮な行為だ。

多くの人にとって、本を焼かれるというのは衝撃的なはずだが、そのシーンがほとんどない。そのうえに、榮倉奈々演じる主人公が大事に持っている『はじまりの国のさいごの話』以外に、具体的な本のタイトルが写らない。これは本好きでない人々が集まって作った映画だと思ってしまう。

さらに気持ち悪かったのは、図書館隊が「“専守防衛”によって自由を守る」ことを掲げていて、まるで自衛隊の代弁をしているようなシーンが繰り返しでてくることだ。戦後民主主義の欺瞞の中でできた自衛隊という制度の自己正当化に見えて、何とも不快だった。あとでパンフレットを読んだら、自衛隊の全面協力を得たという。

唯一おもしろかったのは、後半の銃撃戦の舞台が、磯崎新の変な建築で知られる北九州市美術館だったことだ。あの丘の上の美術館に何度も行ったことのある私は、ワクワクした。

半分以上が「専守防衛」の間の抜けた銃撃戦ばかりだが、これはそれなりに力が入っているし大音響の音楽と共に見たら、感動する観客もいるかもしれない。

これが封切り2日間で興収2億を越し、ずっとまともな『舟を編む』や『藁の楯』を初動で上回っている。去年の『テルマエ・ロマエ』でも思ったが、日本人は本当に映画を見る目を失くしつつある。

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