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2013年5月 7日 (火)

ベンティヴォッリオを見る楽しみ

ファブリツィオ・ベンティヴォッリオというイタリアの俳優がいる。日本では無名だが、イタリア映画祭ではお馴染みの中年男優だ。今年の映画祭にはなぜか1本も出ていなかった。と思っていたら、映画祭で『ブルーノのしあわせガイド』という予告編が流れて、そこに出ているではないか。17日までと聞いて、シネスイッチ銀座に駆け込んだ。

なぜヴェンティヴォッリオがいいかというと、愛すべき中年男だから。元ハンサムで少しインテリだが、要領の悪い一途な生き方をしてきて落ちぶれた感じの役柄をいつも演じる。実際、『マラケッシュ・エクスプレス』(89)の頃は本当にハンサムだった。

ところが『聖アントニオと盗人たち』(00)や『虎をめぐる冒険』(02、ちなみに共にマッツァクラーティ監督作品)あたりから、だんだん滑稽味を増してきて、何ともいい感じになった。いつも同じような役柄で、彼が出てくるだけで私は嬉しくなる。イタリア北部ベネト地方の強い方言も、東北弁みたいでいい。

彼が初めて監督した『よせよせジョニー』(07)には少しがっかりした。映画にフェリーニのような作家性が出ていて、彼の魅力が十分に出ていなかったように思った。舞台にした1970年代の南部イタリアの感じは良かったけれど。

前置きが長くなったが、『ブルーノのしあわせガイド』(イタリア映画祭では『シャッラ/いいから』の題)は、十分楽しめた。元教師で今は個人授業とゴーストライターで生きている中年男が、ある日ある女性から「あなたの息子がいる」と言われて、一緒に暮らす話だ。

15歳の息子ルカは勉強嫌いだが、なかなか憎めないいい奴だ。だんだん2人は近づき、ある事件がきっかけで、父親は息子の信頼を得るというもの。

十分に練られた脚本だが、ある事件の解決法が、あまりにインテリ過ぎる。シュナーベルの絵にトリュフォーの『大人はわかってくれない』、パゾリーニの詩やプリモ・レーヴィの文章まで出てくるのだから。

舞台はローマで、北部なまりの彼はサッカーの試合を見せているカフェで「ローマとラツィオのどちらを応援するか」と聞かれて、「パドヴァのラグビー」と答えるおとぼけぶり。そういうお定まりのユーモアの弱さも含めて、愛すべき映画だった。

この映画館で最近見たイタリア映画『ある海辺の詩人』もそうだが、こうしたヨーロッパの小さな佳作の公開が最近減った気がする。

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