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2013年5月13日 (月)

梅佳代の写真に笑う人々

写真家、梅佳代の初めての美術館での個展が、東京オペラシティ・アートギャラリーで開かれている。彼女の写真はこれまでも見たことがあったし、どうも若者に人気らしいので見に行った。一番驚いたのは、観客が見ながらニヤニヤ笑っていることだ。

彼女の写真のテーマは、一言で言うと日常の一コマ。子供や老人や中学生が見せる、ちょっとしたよくある瞬間を切り取る。

女子中学生がスカートをめくったり、下着を頭にかぶって笑ったり。道路でふざける男子小学生たち。まわりを気にしない老人たち。あるいは道路に糞をした犬。そんな写真が目一杯に拡大されて、会場を埋め尽くしている。

観客はそれを見て、「あるある」という感じでニコニコしている。私にはその展示空間がなぜか不快だった。とりわけまわりや社会のことを一切考えない能天気な子供や老人を選んで、彼らの天衣無縫な行動を写真として取り上げることに、どうも違和感がある。

さらにそれを見て楽しい気分に浸っている観客を見ながら「これでいいのか」と思った。もちろんすべては作る者、見る者の勝手だけれど、これが美術館で見せられているのは、何だか平成日本の居直りのような気がしてしょうがない。

その後に、ソファを探しに新宿に出た。元新宿三越メンズ館の大塚家具の中には、まさに梅加代の写真に出てくるような人々がいた。ソファに座ってみたり、ベッドに寝てみたり、やりたい放題の平和な人々。どうも頭の中が梅佳代の写真に影響を受けたらしい。その意味ではインパクトが強かったのだろう。

かつてこの場所の最上階には三越美術館があった。「マグリット展」などそこで何回か展覧会をやった私には、懐かしの場所だ。それが今やこれかと思うとやはり寂しい。

そういえば、オペラシティ・アートギャラリーでは、メインとなる展覧会のほかに、いつも上の階でコレクション展と若手作家展が開かれている。若手の秋山幸という画家の作品展を見たが、これが何とも刺激的だった。まるでマティスの日本版のような、色彩と模様の根源的な探求があった。梅佳代展の後で、思わず嬉しくなった。

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