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2013年5月 6日 (月)

アントニオ・ロペスが描くスペインの闇

渋谷の東急文化村ザ・ミュージアムで始まったばかりの「アントニオ・ロペス展」を見た。ロペスと言えば、このブログを読む方には、ビクトル・エリセの『マルメロの陽光』(92)に出ていた画家と言えばわかりやすいだろう。彼の日本で初めての個展という。

映画だとマルメロを始めとして、植物を描く画家に見えるが、実際は人物や風景や室内の絵が多い。私はマドリッドの国立ソフィア王妃芸術センターで1993年に開催された個展のカタログを入手して、その不思議な光に取りつかれてきた。

《グランビア》のような絵は、まるで写真か細密画のように街の外観を見せる。何の変哲もないようで、そこに妙な雰囲気が漂っている。生と死の匂いといったらいいのか。今回見てみると、手前に汚いコンクリートを置いたり、犬が死んでいたり、もっと変な風景画が多い。

展覧会を見て驚いたのは、初期の1950年代は、シュルレアリスムの影響の強い絵が多いこと。まるでダリやキリコみたいだ。60年代半ばから、そのシュールな部分を日常の中に埋め込むようになる。

人物を描くにしても、どこか死の影が差しこんでいる。平面の木を彫った《眠る女》の迫力といったら。部屋の中を描いたデッサンの暗さ。そして最後に人物の彫刻があった。生と性と死のすべてが塗り込められている。

マドリッドには、2度行ったことがある。1度目は学生時代で、2度目は5年ほど前。絵の記憶を求めて、「グランビア・ホテル」に泊まった。朝、そこからロペスの絵と同じような不思議な光が差し込んでたのを思い出す。いくつかのアポがあったが、アポがとれないままだったビクトル・エリセとはギリギリで会うことができた。ホテルに来た彼の辛そうな顔を思い出す。

アルモドバルのオフィスに行って、弟のプロデューサーに会った。パリで開催中の展覧会を日本に巡回させたいと申し入れたが、あっさり断られた。「ペドロは友人がいない場所には行かないので」。

そういえば、1995年ごろ、ロペスの展覧会の日本開催を準備していたことを思い出した。一緒にやろうとしていた女性がいなくなって、この企画は頓挫した。カタログはその時に入手したものだ。今回の展覧会を見た後にほぼ20年ぶりに開くと、もっと不可解な世界が広がっていた。この展覧会は6月16日まで。

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