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2013年5月 1日 (水)

不真面目な大作と真面目な小品と

公開中の三池崇史監督『藁の楯』を見て、何とも不真面目なアクション大作だと思った。イタリア映画祭で、真面目な小品ばかり立て続けに見たせいもある。確信犯的なB級映画といったらいいのか。

もともと三池崇史は、B級映画を量産する監督だ。『愛と誠』のようなバカバカしい傑作もあれば、『悪の経典』のような途中から失速する失敗したアクション映画もある。ところが『一命』のような生真面目なテーマだと、どこか機能しない。

今回は、自分の孫を殺した男に10億円の賞金を懸けた金持ちがいて、その殺人犯を護送するSPたちを描く内容だ。もともと新聞に「この男を殺したら10億円出す」と全面広告を打つことは今の日本では不可能だ。映画では数十人を買収して広告が出るが、これは無理。

その無理から始まって、何ともありえない設定を次々に作りながら、ガンガンとアクションを見せてゆく。犯人を福岡から護送するのなら、仮に予定した飛行機の整備士におかしな奴がいても、警察のヘリを飛ばせば済む。これを350人の大移送部隊で高速を走ったり、こっそり新幹線に乗り換えて車掌を脅して自由席を占拠したりなんてありえない。

そんな設定におかしいおかしいと思いながらも、トレーラーが何十台のパトカーを潰すシーンに息を飲み、新幹線の中のやくざと警官の銃撃戦にドキドキする。新幹線を降りて歩き出したり、最後はタクシーにまで乗るが、緊迫感はラストまで続く。

犯人はあくまで悪であり、人間性のかけらもない。主演級のSPを演じる松島菜々子さえ、途中で殺される。この血も涙もない展開に嬉しくなった。これが今年のカンヌのコンペに出るというが、このB級度の高さでは、賑やかしにしかならないだろうけど。

その翌日に、7月13日公開の日向寺太郎監督『爆心 長崎の空』を見た。長崎を舞台に、原爆の影を引きずりながら生きる2つの家族の話だ。その真面目すぎる内容に、最初は息苦しかったが、誠実な描写がだんだん心に沁みてきた。

『藁の楯』に比べたら本当に低予算の小品だが、けなげに生きる不幸な人々を演じる俳優たちがいい。主演の稲盛いずみが全身に哀しみを感じさせるし、宮下順子、杉本哲太、柳楽優弥などの脇役もうまい。映画は何でもアリだ。

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