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2013年6月15日 (土)

1930年代の日本映画について語る女たち

フィルムセンターで清水宏の映画を見ていたら、1930年代の日本映画についてもっと知りたくなり、何冊かの本を買い集めた。昨日書いたミツヨ・ワダ・マルシアーノ著『ニッポン・モダン 日本映画1920・30年代』、御園生涼子著『映画と国民国家 1930年代松竹メロドラマ映画』、宜野座菜央見(ぎのざ・なおみ)著『モダン・ライフと戦争 スクリーンのなかの女性たち』。

いずれも最近出た本で、著者は3冊とも女性。ざっと斜め読みした感じだと、アプローチは一言で言うとカルチャル・スタディーズというか、マクロで文化史的な視点から日本映画のモダニズムと戦争の関係を論じている。いわゆる監督論でも作品論でもなく、映画から浮かび上がる当時の世界観が描かれる。

一番読みやすいのは、『モダンライフと戦争』。ほかの2冊に比べて、いわゆる研究論文調ではない。この本がすごいと思うのは1930年代の膨大な数の日本映画を紹介しながら、女性像の変遷を述べている点だ。あとがきには、この時代の300本以上の映画を見たことや、その多くが米国議会図書館映画部門で集中的に見たことが書かれている。

だから読んでいてもこちらが見ていない作品が多くて、ついていけない部分もあった。それゆえ斜め読みに近かったが、とりわけ映画女優の変遷が興味深かった。まずは1920年代の栗島すみ子。日本映画が始まった頃は、歌舞伎のように女性は女形が演じていたが、「映画女形に止めの一撃を加えたのが栗島すみ子である」

栗島は時代劇映画には出ていない。楚々とした和装で現れた彼女は、次第に断髪で洋装のモダン・ガールも演じるようになる。カフェの女給から芸者、髪結い、有閑ブルジョア夫人、新聞記者、ルンペンなど幅広い。それでも全体としては和装の日本的な姿が多い。

それから1930年代になると田中絹代や原節子が登場し、40年代に高峰秀子が登場する。働く女性から次第にけなげな少女に向かう女性像。それらが具体的な作品を通じて分析されるが、いかんせんこちらはその映画を見ていない。

それにしても原節子の『母の曲』(37)での清楚な令嬢姿や『東京の女性』(39)のネクタイをした男性的な姿の写真を見ると、映画自体をどうしても見たくなる。そんな欲求不満が溜まる本でもある。


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