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2013年6月16日 (日)

清水宏の学校もの2本

暇さえあると、フィルムセンターで清水宏を見る。清水宏と言えば、子どもを扱った映画で有名だが、昨日はそのうちの学校ものを2本を見た。『信子』(40)と『みかへりの塔』(41)。

時代的には38年の国家総動員法や翌年の映画法の後だが、戦争の影は全くない。少し前の『有りがとうさん』(36)や『按摩と女』(38)といった瑞々しい傑作に比べると精彩は欠いているが、どちらも十分に見ごたえがあった。

『信子』は、女学校に赴任した九州出身の教師信子が、正義感をみなぎらせて活躍するさまを描く。男性は、寮に飛び込む泥棒と、わがままな女生徒の父親で学校の後援者がほんの少し出るだけで、全編女性だらけの映画だ。

信子訳の高峰三枝子が、九州から出てきたにしてはあまりに清楚で、九州弁を笑われるシーンがピンと来ない。彼女は親戚を頼って芸者置屋から学校に通うが、そこに住む芸者修業中の娘たちと同世代に対比が興味深い。制服姿の女学生を見る娘たちは和服で、羨ましそうに学校を覗く。

信子を始めとして先生は全員洋装だが、信子は家の中では和服だ。学校は三階建てのモダンなビル。職員室で先生たちが議論したりするシーンがほとんど左右対称なのも興味深い。わがままな娘がベッドで泣きじゃくるのを正面からじっと捉えるシーンなども含めて、清水特有の正面好きが見て取れる。

『みかえりの塔』は、非行児童を集めた学校の話。何人かの生徒のエピソードが語られるが、どの生徒もとても問題があるとは思えないほど素直だ。興味深いのはこの学校の構造で、20名ほどの教師は全員男性で、その妻たちは「お母さん」としてそれぞれが10名ほどを預かって「家庭」を築き、夫と共に住む。授業は男女別。

一見民主的なようで男性中心の学校だが、41年の作品にもかかわらず、軍国主義の匂いは皆無。ある種原始共産制のような感じさえ受ける。学校の敷地のそばを鉄道が走り、時おり列車が背景に写るのが何とも快い。出だしも終わりも大勢が学校の周りを歩く野外の移動撮影だ。ここでも職員室のシーンなどに、左右対称の絵画のような場面がある。

終盤で全員で井戸を作るシーンはキング・ヴィダーの『麦秋』(34)そのままだが、いま一つの盛り上がりだった。それはともかく、この時代にあえて戦争色を出すまいと無言の抵抗をしているような作品を見ると、『サヨンの鐘』(43)のような李香蘭を使った国策映画を是非とも見たくなる。

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