« 『小津安二郎周游』についてもう一度 | トップページ | 『リアル』の微妙さ »

2013年6月 9日 (日)

清水宏に唸る

昨日、『小津安二郎周游』で、1933年の日本について書かれた部分を引用していたら、その時代の映画が無性に見たくなった。そこでフィルムセンターに行って、清水宏監督の『港の日本娘』(33)と『金環触』(34)を見た。そのおもしろさに唸った。

『港の日本娘』は、去年亡くなった井上雪子主演の映画だが、ハーフの彼女はドラという外国人(あるいはハーフ)を演じる。高校時代の彼女の親友砂子(及川道子)には、これまた外国人のヘンリー(江川宇礼雄)という恋人がいた。横浜を舞台に、異国情緒たっぷり過ぎる物語だ。

砂子はヘンリーを別の女性に奪われて、教会の中でその女性にピストルを撃つ。だんだんとアップになるショットの積み重ねは清水宏特有のものだが、最後のショットで突然銃を構えていたので驚いた。その後砂子は女給をしながら流れ流れて、長崎や神戸を経て再び横浜へ。

砂子はそこでヘンリーがドラと結婚しているのを知る。砂子の驚き以上に、幸せそうにスープを飲むドラに見ている私がびっくりした。砂子はドラの家を訪ね、2人と再会する。ところがヘンリーは砂子とよりを戻す。2人のダンスに転がる毛糸の玉。

結局、砂子は画家の恋人(齋藤達雄)を連れて去ってゆく。大型客船だから外国行きだろうか。波や鳥、テープのショットが積み重なり、恋人は海に砂子の絵を投げる。そういえば、冒頭も船の出発のシーンだった。何とも上品な井上雪子がすばらしい。彼女が後半、覚悟を決めてネクタイをして帽子をかぶった様子はたまらない。サイレントの美学が詰まった、何ともスタイリッシュな1本。

『金環触』は、友人神田のために相思相愛の絹代を捨てて故郷を出た大崎が、女給に身を落とした絹代と東京で思いがけず再会するという恋愛ドラマ。加えて上京後世話になった政治家の娘の鞆音(桑野通子のデビュー!)は大崎を愛するが、父の意向もあって出世した神田と結婚する。

二重に重なった友人との恋愛騒動だが、サウンド版でかなりの部分で音楽が入っていて、相当に盛り上がる。水車の前で手紙がアップになって音楽が鳴り響くなど、かなり音楽を意識した演出だ。後半、絹代が金持ちと熱海に行き、そのタクシーを運転していた大崎と鉢合わせ。熱海のホテルでとうとう大崎は金持ちに殴り掛かり、そこに神田と鞆音が駆けつけて大団円。

ラストは大型客船で洋行する神田と鞆音を写した後、列車に乗った大崎と絹代を後ろから写す。音楽に頼っている分、映像は凝っていないように思えたが、血沸き肉躍る1本だった。しばらくは清水宏にハマりそうだ。

|

« 『小津安二郎周游』についてもう一度 | トップページ | 『リアル』の微妙さ »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/57553138

この記事へのトラックバック一覧です: 清水宏に唸る:

« 『小津安二郎周游』についてもう一度 | トップページ | 『リアル』の微妙さ »