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2013年6月29日 (土)

清水宏の戦後作品3本

書こう書こうと思いながら先延ばしになっていた清水宏の戦後の3本について、忘れないうちに簡単に記しておきたい。『小原庄助さん』(49)、『もぐら横丁』(53)、『何故彼女等はそうなったか』(56)。

『小原庄助さん』は、時代劇の大スター、大河内傳次郎が主人公の庄助さんを演じる怪作。彼が朝風呂に入るシーンに始まって、ロバに乗って村を行く様子の存在感がすごい。呑気なのにあまり楽しそうでなく、しょうがないなあ、という倦怠感のようなものを漂わせている。

風見章子演じる妻もいい。夫があらゆる頼みを引き受けて家が傾いてゆくのを、じっと楽しそうに見ている。とうとう倒産して実家の父親が連れ帰ると、庄助さんは「ありゃ、いい家内だった」。

ラストで庄助さんが家を売り、1人歩いていると、そこに女性の足がアップで映る。そしてカメラは走って追いかける女を移動で見せる。「早く来んかあ、列車に送れるぞー」と庄助さんの声が入り、2人が並んで歩くロング・ショットが映る。チャップリンを思わせるラストだが、これがわざとらしくないのは、サイレント時代に輝いていた清水だからだと思う。

『もぐら横丁』は、戦後作品ではかなりおもしろい方だろう。佐野周二演じる売れない小説家が、結婚をして苦労をしながら最後に芥川賞をもらうまでをユーモラスに描く。戦前から清水作品を始めとして松竹大船の看板だった佐野周二が、頼りないが芯が強い感じの青年を演じて抜群の安定感を見せる。

能天気な妻を演じる島崎雪子や近所の広告ライターの森重久彌などもおかしい。林芙美子を思わせる世話好きの近所の作家もいる。ラストに芥川賞を取って、2人は浅草に食べに行き、仲見世通りを歩く。その移動撮影。妻の顔のアップ。ちょっと泣きそうになった。

『何故彼女等はそうなったか』は、清水得意の施設もの。非行少女を集めた学校の日々を描いたもので、中心となる先生を演じた香川京子はぴったり。校長先生がなぜか高橋豊子で、『東京物語』の最初と最後に出てくる近所のおばさんぶりの印象が強すぎるせいか、見ていて落ち着かない。

私はどうも清水の施設ものが苦手だ。子供ならまだいいが、非行少女たちだとどうもわざとらしい。女優が演じる彼女たちは美人で身なりがよく、とても問題児には見えなかった。それでも娘たちと香川京子が道を歩くシーンなどは清水らしくていい。

フィルムセンターでは1回目の上映が一巡して、またサイレント作品が始まっている。見逃した作品を見たいが、なかなか時間が取れそうにない。新作の試写もあるし。大学で教えて5年目になるが、相変わらずのせわしない生活が続く。

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