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2013年6月27日 (木)

本当のことを言おうか:勲章の話

先日、映画評論家の中川洋吉さんがフランス政府から勲章をもらうというので、フランス大使館に出かけて行った。カンヌ国際映画祭に40年も通い、長年に亘ってフランス映画を日本に紹介したというのが受勲の理由だ。考えてみたら勲章、とりわけ外国の勲章は不思議なものだ。

まさに反体制が歩いているような人も、外国の勲章は喜んでもらう。作家の大江健三郎は、ノーベル賞はもらったが、文化勲章は拒否した。戦後民主主義者の自分にはふさわしくないと言った記憶がある。

これはまだ理屈が通る。その後フランスが核実験を始めると、大江健三郎は猛烈にフランス批判を始めた。フランスのワインはやめて、カリフォルニア・ワインを飲んでいる写真が新聞に出ていたのを覚えている。その頃私は前職の新聞社でフランス文化省と日仏シンポジウムの準備をしていたが、そこでわかったのはフランス側の一番の目的は、そこに大江健三郎を参加させてフランスと和解させることだった。

彼はなかなかシンポジウムに参加しようとしない。そこでフランス側が考えたのが、まず彼にレジオン・ドヌール勲章を与えることだった。すると驚くことに大江健三郎は喜んで受けますと言い、その後日仏シンポへの参加も表明した。

そうか、勲章一つで大作家も転ぶのかと思った。ちなみに勲章には賞金はない。賞状と、小さな金属の勲章と略章が入った箱をもらうだけだ。たぶん1万円もかからないだろう。そのうえ、フランス大使館の叙勲式はパーティどころか水も出ない。中川さんもパーティの費用は自分持ちだと言っていた。だから勲章をもらうと、むしろお金がかかる。

それでもみんな喜んで勲章をもらうし、その後もらった国への忠誠を誓うから、文化外交としては最大の武器だろう。フランスはそれを最大限に利用している。フランス料理の日本人シェフは、農事功労章をもらうのを最大の名誉としていて、有名なシェフはみんなもらっている。芸術関係は芸術・文化章が多い。とにかく毎年かなりの日本人が勲章をもらう。

かくいう私も、イタリアとフランスから勲章をもらった。まずイタリア映画祭を設立し、イタリア映画を日本に広めたという理由でイタリア政府から2006年にもらった。すると知り合いのフランス人女性がフトシをイタリア人に取られるのはまずいと騒ぎだし、大統領府の女友達と計って、翌年国家功労章というものをもらった。この策謀は東京のフランス大使館も知らなかったので不快感を示し、叙勲の会場は大使館外に設定された。

勲章がいかに恣意的かということを言うために書いたが、自慢に見えたかな。もちろん中川さんの場合は長年の努力が正当に評価されたわけで、私の場合とは違うことは言うまでもない。

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