本当のことを言おうか:人前で話すのは苦手
実は、人前で話すのが苦手だ。こう書くと、信じてもらえないかもしれない。まず大学で教えているし、それ以上に昼でも夜でも会えばいつでも一人で話しているではないかと言われそうだ。そうではなくて、知らない人の前でマイクで話すのが、ヘタなのだ。
先日、菊地成孔さんと野宮真貴さんと一緒に、ある映画をめぐるトークショーに出た。クレジットカードの会員向けの閉じたイベントだったが、これが緊張した。二人はそもそもミュージシャンで、多分野で活躍する個性派。舞台慣れしている。
カード会社がスポンサーなので舞台も豪華で、それぞれが登場する音楽まで事前に決めるくらいだった。私は司会のような役割だったが、文字通りコチコチになった。司会のくせに何度か会話が途切れそうになったところを、お二人に救っていただいた。終わると疲れがどっと出た。
人前で話すのがヘタだと気がついたのは、前職の新聞社の時だ。送別会などでの挨拶の後に、「おもしろくなかった」「ヘタだ」と言われた。確かに新聞社の人は話がうまい。洒落た、気の利いたことをことをさらりと言う。自分はどうもそういう即興ができない。
数名の宴会の席を盛り上げるのはむしろ得意だ。話題は豊富だし、くだらない冗談なら自信がある。ところがマイクを持つとダメになる。
大学の教師になったら、トークや司会の依頼が来るようになった。映画の前に20分ほど話すやつが多い。これは原稿を用意することにした。それでも、たぶん、あまりうまくない。
一度はとんでもない分野の司会を引き受けた。東京日仏学院で、元ユネスコ事務局長の松浦晃一郎氏と、フランスの女性大臣、カトリーヌ・コロナ さんの座談会だ。題して「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約:その適用法と新しい課題」。
これは、2週間徹底的に勉強した。無形文化遺産保護条約とか文化多様性条約の条文まで日仏語両方で読み込んだ。これはうまくいったと思う。真面目な中身なら、勉強すればなんとかなる。
しかし、ミュージシャンたちとの即興の会話は勉強のしようがない。もっとこうした経験を積めばうまくなるのだろうか。どうもそうは思えないけれど。こんな文章を書くと、これから依頼が来なくなるかな。
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