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2013年6月10日 (月)

『リアル』の微妙さ

黒沢清監督の新作『リアル~完全なる首長竜の日』を見た。私には壮大な失敗作に思えた。一言で言うと、黒沢監督特有のB級映画感覚が、テレビ局(TBS)主導の大作志向と誤って結びついてしまったような感じか。

もちろん、おもしろくないわけではない。佐藤健演じる主人公が同居していた漫画家の彼女(綾瀬はるか)は、自殺未遂で昏睡状態にある。彼女を昏睡から救うために、主人公はセンシングと言われる最新技術を使って相手の意識に入り込む。

マンションと病院を行き来する日常とセンシングの中の世界が交じり合い、途中からかつて2人が小学校で過ごした島の風景が出てきて、比重を増す。

高級マンションの無機質さやそこから見える東京の風景、そしてリゾート開発の果てに廃墟と化した島の様子など何ともいい感じだ。それに加えて少しだけ出てくるオダギリジョーや染谷将太、松重豊、小泉今日子といった脇役もいい。センシングの時に出てくるゾンビや、壊れゆく東京の風景も。

後半、主人公と彼女の役割が入れ替わり、そして首長竜が出てくるところも悪くない。とりわけ少年時代の秘密が明かされてゆくところは盛り上がる。ところが全体として全く乗れなかった。

他人の意識に入り込む映画なら『ザ・セル』とか『インセプション』とかあるが、それらに比べて設定が日常的過ぎるし、そもそもの必然性が弱い。それに、もっと日常とセンシングのシーンの境目をなくして欲しかった。それから、彼女と役割が代わるシーンはもっと劇的にできるだろう。

首長竜自体はよくできていたけれど、果たして二度目の倉庫内のアクションは必要だったのか。どうも疑問符ばかりが浮かぶ。

この時期の公開ということは、おそらくカンヌを狙ったのだろう。しかし、黒沢清の大作は海外ではなおさら受けないのではないか。

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現実と仮想が入り交じる黒沢清監督の作品。 主演は佐藤健。佐藤健(浩一)は幼なじみの恋人(淳美)を救うため、最新先端医療技術のセンシングによって、自殺未遂をした恋人の意識化に入り込む。 ...... [続きを読む]

受信: 2013年6月11日 (火) 11時48分

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