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2013年7月15日 (月)

『風の中の子供』の躍動感

このブログを読んでいる友人から、「どうしたんですか、清水宏ばかり見て」とよく言われる。単純に、つまらないかもしれない新作を試写や映画館で見るくらいなら、というものだが、ちょっとクセになったようだ。今度は『風の中の子供』(37)を見た。

これはDVDで見ていたが、状態が悪かったせいか、一般に言われるように彼の代表作というのが理解できなかった。ところが今回初めてスクリーンで見て、抜群におもしろかった。

内容は、父親が会社から詐欺の容疑で訴えられた家族の話だ。2人の子供のうち次男(爆弾小僧)は叔父のところに預けられる。結局疑惑は晴れて無事父親も戻り、一家4人で楽しく暮らす。

何より子供たちの躍動感が楽しい。子供がターザンの真似をして叫ぶと、仲間が集まってきたり、兄弟で家の中でオリンピックの中継ごっこをして、1人がアナウンサー、もう1人が水泳をする。前畑、孫、田島といったメダリストの名前が出てくる。ベルリン・オリンピックの開催はこの映画の前年だ。

あるいは叔父のもとへ預けられた次男は、勝手に盥で川を下り、家に帰ろうとする。それを叔父は馬で追いかけるから、なんだかグリフィスみたいだ。あるいはカッパに会いに行くと出かけた次男を探す叔父は馬に乗り、村人たちは松明を灯す。『サンライズ』を思い出した。探した末に次男は曲芸団にいたというからおかしい。

終盤父親が帰って来るのを知った兄弟は、畳にでんぐり返りをして喜びを表す。父が車で帰って来るのを、子供2人は走り出して迎えに行く。それを捉える前進移動のカメラ。そして父が座敷で叔父たちとお祝いをするのを、子供たちはあちこちから「お父さん」と声を掛けながら、かくれんぼうのように走り回る。そして父親と庭で相撲を取りながら、次男は泣いてしまう。

最後は村にやってきた曲芸団のショットで終わる。知り合った少年(突貫小僧)は二度手を振る。何とも爽やかなラストだ。

フィルムセンターのチラシには、この映画がベネチア国際映画祭に出品されたことが書かれている。去年、この年のベネチアについて調べていたが、この作品は最初からフランス語字幕が付けられており、その後10月にパリで試写が行われている。ここにはマルセル・カルネなどの監督やフランソワ・ロゼーなどの俳優まで来て盛況だった記録があるが、このあたりについては後日書きたい。

ちなみに翌年には公開のために、この映画のネガまでパリで送っているというから、シネマテーク・フランセーズには、ひょっとしてピカピカのネガやプリントがあるのではないか。

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