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2013年7月31日 (水)

「総理大臣になりたい」か

書店で坪内祐三著『総理大臣になりたい』を見て、すぐに買った。この題名にやられた。実を言うと、小さい頃私は「総理大臣になりたい」と思っていた。そうしたら世の中をもっと良くできるのにと真面目に考えた。公害をなくし(時代だなあ)、貧富の差を少なくし、受験戦争をなくしとやるべきことはたくさんあった。

それからそんな志望はすっかり忘れて、いつの間にか会社員になり、教員になった。先生と呼ばれるようになると、暇なせいもあって、上から目線というか、社会に物申す的な発想になりがちだ。そこで「総理大臣になりたい」という題名がぐっと来た。

この題名の本を、まともな文芸評論家の坪内祐三氏が書いているのがおかしい。私より3つ年上だからほぼ同世代なので、総理大臣と言えば佐藤栄作で、少年時代は自民党と読売ジャイアンツが圧倒的に強かった。

しかしこの本を読みだすと私とは大違いで、彼の父親が政界の黒幕的存在で、政治家たちを身近に見ていたことがわかる。「当時は財界人にしても政治家にしても、読書家で知的な人がたくさんいました。私が総理大臣になりたいと思ったのは、そうした文学や哲学を感じさせる政治家がいなくなったからです」

さらにすごいのは次の発言。「階級というのは問題あるかもしれませんが、やはりエリートは必要だと思います。そうしたエリートに身近に接してきた立場として、私は総理大臣になりたいと思います」。育ちがいいというのは、こういう発想をすることか。

第一部が自分の生まれた環境の(自慢)話で、第二部は戦後の首相を振り返る。彼は阪神大震災の時に村山首相が対策を自民党に任せたことを評価し、東日本大震災の時に菅首相が自ら原発に行ったことを非難する。ううん。そして小渕を評価する理由の一つが、彼が自分と同じ早大英文科出身で、卒論がジョージ・オーウェルだったからというのはどうだろうか。

第三部は総理大臣になったらどうするかを書く。まず、そこで父親のコネで『東京人』編集部に入ったことを書いているのがいい。『東京人』は当時は都から助成金をもらっていたので、まず都知事を考えたらしい。

同意するのは、「美しい日本のおわりのはじまりは、田中角栄の『日本列島改造論』です」というくだり。確かにこの40年で、日本はどんどん醜くなった。都会も田舎も画一化し、住みやすい空間ではなくなったと思う。

そこで彼が唱えるのが「小日本主義」というのもわかる。最後に「第一次坪内内閣組閣へ」として、官房長官が阿川佐和子、財務大臣は浅田彰、文部科学大臣は重松清、防衛大臣は「福田和也さんにお願いしたいところですが、女性を多めにということであれば、加藤陽子さんにしましょう」。いやはや、おもしろい。この本全体が、本気か冗談かわからない。

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