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2013年7月17日 (水)

私には遠い『オン・ザ・ロード』

8月下旬公開の『オン・ザ・ロード』を見た。この題だと何のことかわからないが、原作はジャック・ケルアックの『路上』(なぜこれを邦題に入れないのだろう)で、監督がウォルター・サリスということもあって見に行った。

第二次大戦後すぐのアメリカで、小説家を目指す青年の破滅的なロードムーヴィーで、いわゆるビート・ジェネレーションの雰囲気がよく出ている秀作だった。カメラは手持ちが中心で、アメリカ中を旅しながら無軌道な生活を繰り返す若者たちを鮮烈に捉えている。画面のノスタルジックな色合いもいい。

主人公役のサム・ライリーを始めとして、友人役のギャレット・ヘドランドなどの俳優たちが繊細な演技を見せ、愛おしく見えてくる。脇役に配されているキルスティン・ダンストやヴィゴ・モーテンセン、エイミー・アダムスといった大物もいい味を出している。

しかし私にはあまりピンと来なかった。というか2時間19分が長く感じた。これから先は個人的問題だが、まず私はアメリカの地理がよくわからない。デンバーだ、コロラドだといくつもの都市や州の名前が出てきても、ほとんどがどこにあるか知らない。都市ごとに雰囲気が違う感じだが、これもピンと来ない。これがわからないと、全米を旅する感覚が伝わらないだろう。

そもそも私にはたぶん「放浪」が理解できない。普通に大学を出て会社員をしてきた自分のような人間には、4年間も目的もなしに各地を放浪する生活の感覚が、わかりようがない。もちろん私なりに2度転職したし、それぞれの職場でずいぶん海外出張をしてきたが、それは全く違うものだろう。

何より、タイプライターを打ち、あるいはメモ帳に文章を書いてゆく主人公の姿が、自分からは遠い存在だったのかもしれない。プルーストの『スワン家のほうへ』を持ち歩き、自宅の本棚にはジョイスの本が会ったり、ランボーの写真が飾ってあったり。ラストはとうとう本格的に小説をまとめるところで終わる、プルーストばりの構造だが。

おそらく、好きな人にとってはたまらない映画だろう。あるいは少し前だったら相当当たるのではないか。

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