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2013年7月18日 (木)

『タイピスト!』のノスタルジー

8月17日公開のフランス映画『タイピスト!』を見た。フランス映画祭で観客賞を取ったという。見始めた時一瞬、これは昨日書いた『オン・ザ・ロード』ではないかと思ったが、もちろん全く違う。

『オン・ザ・ロード』と同じなのは、主人公が常にタイプライターを叩いているところ。ともにプルーストの本も出てくる。全体がノスタルジックなのも似ている。そのうえ英語とフランス語が混じるところも。

内容は大違い。『オン・ザ・ロード』は小説家が主人公で展開の予測のつかない渋いロード・ムービーだが、こちらは主人公が秘書として就職し、タイピスト大会を目指すというわかりやすい物語だ。

1959年のフランス。女性の社会進出もまだ始まっていなかった頃、秘書という職業は花形だった。その時代を青や赤や黄やピンクの原色一杯で蘇らせた映画だが、そのコミカルなタッチや過去を美化する手法に、私は邦画の『Always3丁目の夕日』シリーズを思い出した。

秘書と社長の恋物語だが、恋愛劇として必ずしもよくできているわけではない。それでも最後まで楽しめるのは、タイピストのコンクールを次々に勝ち抜くおもしろさだ。何十人も一斉に並んでタイプを打つさまは、どこか滑稽でおかしい。

タイプライター自体がいくつも種類があって、主人公がフランス大会で優勝した後に大手の「ジャピー」社と契約し、「ポピュレール」という、この映画の原題でもある名前のピンクの機種を売り出して大ヒットに。しかし世界大会の決勝では、スポンサーとの契約を無視して、昔使っていた「トリオムフ」社のタイプを叩くというのもいい。

「『アーティスト』『オーケストラ!』のスタッフが結集」という宣伝文句だが、確かにその2本と同じく当たる映画の要素が揃っている。レジス・ロワンサル監督の第一回作品だが、フランスでは最初の週だけで40万人も集めたという。

こんな映画が出てくると、ヌーヴェル・ヴァーグは何だったのだろうかなどと思うのは、もちろんオヤジの嘆きでしかないが。そういえば、主人公がタイプの練習に使うのはプルースト以外にも、『ボヴァリー夫人』とか『赤と黒』とか『クレーヴの奥方』とか。あれは何だったのだろうか。

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