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2013年8月 4日 (日)

清水宏の対照的な2本

このブログを読まれている方は、もう清水宏のことは飽き飽きしていると思うけれど、あと1、2回ご辛抱を。今回見たのは『母の旅路』(58)と『花形選手』(37)で、まさに対照的な2本だった。

『母の旅路』は、三益愛子主演のいわゆる「母もの」で、コテコテのメロドラマだ。三益はサーカスのブランコ乗りだが、団長の夫(佐野周二)は、サーカスを止めて実家の会社を継ぐ。急に社長夫人になった三益は授業参観や社長交代パーティで失態を見せて、サーカスに戻ってゆく。娘はそれでも母を求める。

佐野周二がサーカスの団長から突然大会社の社長になるという設定に、無理があり過ぎる。そもそも佐野は全くサーカスに似合わない。娘がコーラス大会に出るのを、サーカスに戻った三益が旅先のテレビで見て涙ぐむというのもコテコテすぎる。さらに娘は旅行先で母のサーカスを見つけて見に行くが、母は娘の声を聞いてブランコから落ち、娘が突如代役を務めるというのも出来過ぎている。

およそ清水らしくないお涙頂戴映画だが、元サーカスのブランコ乗りの母親ゆえに娘が学校で友人に差別されるれるという流れは、清水宏の映画で何度も見てきた設定だ。女給や芸人への暖かい視線とそれを軽蔑する社会のなかで苦しむ子供というパターンだ。

『花形選手』は、30年代の清水の黄金期らしい、一筆書きのエッセーのような作品。軍事教練で行軍をする大学生を描いたものだが、物語らしいものはない。路上で少年たち女学生たちと出会い、あるいは男女の子供を連れた謎の女と会って宿で世話をする。道を歩く人々を写す移動撮影から何とも言えない詩情が漂ってくる、ロードムービー。

「花形選手」役の佐野周二が一応主人公だが、笠智衆らの学友たちが取り囲み、どうでもいいような騒動を繰り返す。「勝った方がいい」と叫びながら踊るシーンが2度ほどあるが、そのナンセンスな騒ぎ方に、軍隊に反発する虚無主義を感じた。

確かノエル・バーチがこの映画を絶賛していたので、彼の本を再読してみたい。いずれにしても、ある意味で最も清水らしい、愛すべき小品。

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