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2013年8月 2日 (金)

またまた清水宏3本

戦前の黄金期の3本について、どうしても書いておきたい。『恋も忘れて』(1937)、『簪』(41)、『子供の四季』(39)。最初の2本は見たのが1週間以上前なので記憶は定かではないが。

『恋も忘れて』は、清水得意の港町横浜を舞台に、チャブ屋(洋風娼家)で働く子持ちの女を描く。冒頭に港のさまざまなショットが5つほど入るだけで、何だか嬉しくなってしまう。母を演じる桑野通子が何とも魅力的で、ホールでドレスを着て(和服の時もある)ダンスするシーンなどは惚れ惚れしてしまう。

息子を演じる爆弾小僧も、その拗ねた感じがいい。例によって母親の職業を理由に友達(その代表はもちろん突貫小僧)にいじめられて、彼が転校する時の母と歩くシーンの横移動撮影。あるいは彼が高熱を押して仕返しをした後の小屋の中の時間の経過が、そっとディゾルブで見せられる快感。

最後は息子が亡くなった後の母の泣きじゃくる言葉があり、さらにその恋人(佐野周二、かっこいいが描写は浅い)のモノローグに続くので少しうんざりするけれど。

『簪』は、『按摩と女』の続編のような作品だが、少し落ちる。温泉宿を舞台に、そこに逃げてきたお妾さんを中心に温泉客を描くというもの。最初は「先生」役の斎藤達雄と新婚の夫を演じる日守信一、戦傷帰還兵の笠智衆などのコミカルな会話を楽しんでいるが、だんだんと妾の田中絹代に焦点が定まってゆく。

彼女が少年と一緒に帰還兵(笠智衆)の歩行練習を手伝うシーンがいい。笠智衆が川に渡された木の橋をゆっくりと渡るシーンの瑞々しさ。そして夏が終わりみんなは帰ってしまうが、田中絹代は残り、彼らからの手紙を読む。そして歩行練習をした場所で、傘をさして優雅に立ち尽くす。こんな呑気な映画がよく1941年に撮れたものだと思うが、そこが清水宏の自由さ、あるいは傍若無人ぶりなのだろう。

『子供の四季』は『風の中の子供』と同じく、葉山正雄と爆弾小僧の兄弟が、父親の不遇の中で生きてゆく話だが、これも『風の中の子供』のような自由な躍動感は少ない。春、夏篇が70分、秋、冬篇が70分の計140分でちょっと冗漫だが、やはり子供たちが道を歩き、川で泳ぐだけで楽しくなる。父親の不幸の背景に会社の事情があるが、これが何ともわかりにくいのが残念だ。

8月になった。清水特集は7日まで続く。

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