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2013年8月21日 (水)

『大統領の料理人』

9月7日公開の『大統領の料理人』を見た。試写状にカトリーヌ・フロのベタな笑顔とエッフェル塔があったので行く気がなかったが、監督がクリスチャン・ヴァンサンと知って見ることにした。彼の『恋愛小説ができるまで』はなかなか良かった。

傑作というつもりはないが、実によくできている。最近シェフや料理をテーマにしたフランス映画はよく公開されるが、これはその中で間違いなく一番おもしろい。

何がいいかというと、料理人の立場から、料理を作る過程がきちんと描かれているから。田舎まで出かけて食材を入手し、かつての料理法を電話で何度も聞く。そして何度も試して一つ一つの皿を作り上げる。その全体がテンポよくまとまっていて、見ていて気持ちいい。

話は、大統領の個人シェフとして突然雇われた女性シェフが、同僚の嫉妬や官僚たちと戦いながら、2年間シェフを続けるというもの。最初に南極の海が写り、基地で料理を作るカトリーヌ・フロが出てくるので「あれっ」と思っていると、4年前に戻り、カメラは空撮でフランスの田舎の風景を見せる。

つまり、始まった時から彼女の大統領府のシェフは長続きしないのだとわかる。フランスの伝統的な味を求めて、戦い続ける日々。そして大統領と話す機会ができて、いかに彼がその料理を評価しているかわかった時の喜び。大統領は楽しくて、15分の時間を大幅に伸ばす。慌てる官僚たち。

厨房は地下で、鉄骨は剥き出しのずいぶん殺風景なところだ。彼女は普通、ドアの手前で給仕人が料理を運ぶのを見送るだけで、テーブルに近づくことはない。給仕長に大統領の反応を聞くだけだ。ある夜、大統領がそこに訪ねてきたので、厚切りの黒トリュフをパンに乗せて一緒に食べる。69年のシャトー・ラヤスと共に。大統領は彼女に「いじめられているようだね。僕もだよ」と言う。

時々写る南極最後の日は、対照的に人間味に満ちている。彼女のための出し物の前になる音楽は『ゲームの規則』の骸骨の踊りのものだ。彼女がボロボロになって大統領府を去るのと、みんなに見送られて南極基地を後にするのが重なってゆく。

この映画はミッテラン大統領の時の女性シェフがモデルという。それにしても、彼女が作ったキャベツのサーモン詰めは美味しそうだったので、今度試してみたい。フランスの縮みキャベツはないけれど。

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