« またまた個人コレクション2つ | トップページ | 『夫婦善哉』の小説、映画、テレビ »

2013年8月24日 (土)

クレイマーの『アイス』に考える

昔、「今すぐ劇場に駆けつけなければならない」というのがあった。蓮實重彦氏がこう煽ると、いてもたってもいられなくなった記憶がある。先日、久しぶりに似たような「義務感」を感じて劇場に行った。あのロバート・クレイマーの未公開2作品が上映中という。

とりあえず『アイス』(69)を見た。クレイマーと言えば、『ルート1/USA』(89)の衝撃が忘れられない。私は山形国際ドキュメンタリー映画祭で見逃して、パリで見た。

主人公のモノローグと共にアメリカを縦断する旅に、見終わってぼーっとしてたら、映画館に併設したカフェに監督がいてびっくりしたのを覚えている。それからパリでは『ドクスキングダム』(86)も見た。ポルトガルで孤独に暮らす医師ドクの話で、明らかに『ルート1/USA』の旅につながっている。

その後『倦怠』(98)という変わったフランス映画で、変死する老人の役を演じていた。その直後、99年に亡くなっているが、彼の映画はもう20年ほど見ていなかった。

今回の『アイス』はこれまでに見た2本とは違って、60年代後半の活動家たちの話だ。彼らが集まって討論し、政府転覆を狙うが、公安にマークされる。活動家の側に立って、手持ちカメラで即興的に撮る感じに、一見、日本の学生運動を扱ったドキュメンタリーの『圧殺の森』や『パルチザン前史』を思い出した。

ところが中身はドキュメンタリーどころではない。メキシコでは解放戦線が米軍と戦っていて、主人公たちは国家に対して暴力革命を企てている。実際に製油所に火をつけたり、刑務所を襲ったり。むしろSFに近い。

そのうえ、文字やナレーションや写真をあちこちに混入させる。さらにおもちゃの戦車やクレーンが出てくるカリカチュアのようなシーンもある。これはほとんど同時代のゴダールである。

ロバート・クレイマーの原点はこういうところにあったのかと、考えさせられた。その感性やスタンスはゴダールや、クリス・マルケルやヨリス・イヴェンスに近い。つまり、ヨーロッパ的だ。

もう1本の『マイルストーンズ』(75)も見たくなったが、202分という長さに躊躇している。

|

« またまた個人コレクション2つ | トップページ | 『夫婦善哉』の小説、映画、テレビ »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/58048303

この記事へのトラックバック一覧です: クレイマーの『アイス』に考える:

« またまた個人コレクション2つ | トップページ | 『夫婦善哉』の小説、映画、テレビ »