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2013年8月31日 (土)

ベロッキオ『眠れる美女』再見

去年の東京国際映画祭で見ていたが、10月19日からの公開が決まり、もう一度見たくなって出かけた。今世紀に入ってからのマルコ・ベロッキオは、とにかくおもしろい。イタリアでは20世紀後半に活躍したベルトルッチとベニーニとトルナトーレが失調して、その分ベロッキオとモレッティが再生した感じか。

最近のベロッキオは、現代劇と歴史ものを交互に混ぜながら、極限の状態に置かれた人々の行動を、ヒステリックに、そしてシニカルに描き出してきた。

『母の微笑』(02)は母を聖人としようとする現代の家族、『夜よ、こんにちは』(03)は1978年のモーロ暗殺事件のテロリストたち、『結婚演出家』(06)は落ちぶれた映画監督、『愛の勝利を』(09)はムッソリーニの愛人、どの映画も人間の狂気と怒りを描いてきた。

今回は、2009年に実際にイタリアで起きたエルアーナ・ユングラードの尊厳死をめぐる事件を軸に、3つの物語を描く。1つはその尊厳死を巡る国会の議決に賛成票を投じるか悩む国会議員とその娘の話。もう1つは、自殺常習犯の女性と医師の話、そしてもう1つは、植物人間状態の娘の介護に人生を賭ける元大女優とその家族の話。

その3つが交差して話が進むため、最初は何が何だかわからない。そのうえに、おどろおどろしい狂った人々のオンパレードだ。自殺常習犯を演じるマヤ・サンサの濃い眉毛の顔のアップに始まって、元大女優を演じる凄まじい顔つきのイザベル・ユペールの狂信的な娘への愛、ベルルスコーニへの忠誠を誓うか議論する醜い議員たち、エルアーナの延命を求めて病院の前でデモをする人々。

人間の死を前にした狂気が渦のように描かれ、だんだんそれぞれの物語の輪郭が明らかになってきた頃、その中から少しだけ希望が見えてくる。国会議員(トニ・セルヴィッロ)の娘(アルバ・ロルヴァケル)は恋をした後に初めて父親と向きあい、マヤ・サンサは窓から飛び降りようとして、ふと留まる。

全体としてはバランスは悪いし、ない方がわかりやすい部分もあるだろう。しかしそのいびつな作りをあえてそのまま放り出すところに、ベロッキオの確信犯的な究極のニヒリズムが見えてくる。恐るべき作品。

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