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2013年8月13日 (火)

『わたしはロランス』に脱帽

久しぶりにフランス映画の新しい才能を見た気がする。9月7日公開の『わたしはロランス』のグザヴィエ・ドラン監督のことだ。正確にはカナダの仏語圏出身だが、わずか24歳。濃厚な物語を、リアルであるながらシュールな映像で描く才能に脱帽。

小説家を目指す35歳の国語教師ロランスは、ある時突然恋人のフレッドに「女になりたい」と漏らす。最初は驚愕するフレッドも、だんだんロランスを応援し始める。しかし突如女装をしたロランスに世間は驚き、大騒ぎになる。それからの辛くて愛おしい10年間。

1989年に始まって、1999年までがいくつかに分けて語られる。父兄からの通知で学校をクビになり、バーで知らない男に殴られるロランス。2人は別れてそれぞれ別のパートナーと暮らし始めるが、あるきっかけで再会する。それから別れて再び再会。

愛し合っては喧嘩別れするすさまじい恋愛劇が、手持ちのカメラでリアルに語られるかと思うと、突然家の中で大雨が降ってきたり、空から無数のカラフルな衣服が降ってきたり。あるいは80年代の軽いポップスの後に、ベートーベンやブラームスが聞こえたり。ほとんど感覚だけで全体をつないでいるようで、終わってみると実は周到に計算されつくされていることに気づく。

舞台を20世紀の最後の10年にしたのもうまい。何となく世の中が変わりつつある、しかし古いものも愛おしいような時代だから。主演のロランスを演じるメルヴィル・プポーの、10年間の変貌ぶりが見ていて快い。相手役のスザンヌ・クレマンも存在感がある。そしてロランスの母親役のナタリー・バイが、世の中を達観した感じでカッコいい。

フランス映画としては、レオス・カラックスやフランソワ・オゾン並みの天才の久々の出現ではないだろうか。若いだけに今後が楽しみ。新作はベネチアのコンペに出るらしいし。

この映画を見ると女装をしたくなる、というのはウソだが、ああいうのもいいなとは思う。

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