« 通りががりに見た美術展2本 | トップページ | ソフィア・コッポラの巧みさ »

2013年9月 6日 (金)

『恋の渦』に頭がくらくら

最近衝撃を受けた邦画と言えば『立候補』と『陸軍登戸研究所』だが、これらはドキュメンタリー。先日、劇映画でガツンとやられたのは、『恋の渦』だ。大根仁監督の『モテキ』に次ぐ第二作という。

とにかく、とんでもない映画だという噂は聞いていた。『モテキ』と違って超低予算で有名な俳優はゼロだが、とにかくおもしろいという。3月に自主上映で満員になり、7月にレイト上映して今回の再々上映となったらしい。

9人の20代の男女が部屋の中でそれぞれ勝手に話し出す冒頭を見た時、最初は『サウダージ』を思い出した。社会からあぶれたフリーターたちが、エネルギーを爆発させるさまをだらだらと見せる映画だと思ったからだ。ところがそんな社会性や思想は全くない。

内容としては、最初のパーティがオサムにユウコを紹介するという趣旨だったが、それから9人の男女のこんがらがった愛の行方が、4時間後、1週間後、2週間後というように、時間を追ってドキュメンタリーのように描かれる。場所はいくつかの部屋の中だけ。

どいつもこいつも何も考えておらず、性的にだらしなく、平気で恋人をだます。要はやりたいだけ。それでも見ていると、いるいる、こんな奴、という気がしてくるし、自分に似たところさえあるような気さえしてくる。

おやじのわからない若者の異世界という点では、映画版『桐島、部活やめるってよ』を思い出した。しかしあの映画にはまだ映画的美学があるというか、一つ一つのカットを丁寧に選んでいた。この映画には、そうした美学はなく、男女のグダグダをリアルに追いかけただけ。

原作は劇団ポツドールによる演劇だから、実は考えつくされた脚本があったはずだが、見ていると即興で作ったようなライブ感が溢れている。役者が本当にその人物そのもののように見えてくる。もちろん誰にも感情移入できないが、何だか心配になって138分があっという間に過ぎた。見終わると頭がくらくらした。

こんな映画を見ると、日本映画も行きつくところまで行ったという気もするが、それもたぶん監督にとっては計算済みなのだろう。とにかく今の日本映画を考える上で、決定的な1本であることは間違いない。

|

« 通りががりに見た美術展2本 | トップページ | ソフィア・コッポラの巧みさ »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/58134008

この記事へのトラックバック一覧です: 『恋の渦』に頭がくらくら:

« 通りががりに見た美術展2本 | トップページ | ソフィア・コッポラの巧みさ »