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2013年9月29日 (日)

本当のことを言おうか:『ウルトラマンが泣いている』

実は暴露ものが好きだ。この夏だけでも、『安倍公房とわたし』、『野中広務回顧録』に続いて、円谷英明著のこの本を読んだ。副題は「円谷プロの失敗」で、帯には「なぜ創業者一族は追放されたのか」 「“特撮の神様”の孫が明かす栄光と迷走の50年」。

もう、この帯だけで読んだような気になる。「特撮の神様」と言われた円谷英二は、戦前に『ハワイ・マレー沖海戦』(42)の真珠湾攻撃の特撮で名を馳せ、戦後は『ゴジラ』(54)やテレビの『ウルトラQ』『ウルトラマン』などで一世を風靡した人だ。

その孫が、小さい頃の祖父の思い出に始まって、祖父の後を継いだ父、一(はじめ)の仕事について語り、自分が円谷プロに入って社長になり、会社を売り渡すまでをつぶさに描く。題名は「ウルトラマンは泣いている」だが、本当は「円谷家は泣いている」あるいは「私は泣いている」という感じの書きぶりで、読んでいてこちらも悲しくなる。

個人的には、1966年に始まった『ウルトラQ』や『ウルトラマン』に、完全にハマった記憶がある。今でも「ウルトラQ」の冒頭の音楽が耳に蘇るほどだ。翌年、『ウルトラセブン』が始まった時は、次々に出てくる宇宙人にどこか違和感を覚えた。何と言っても、ウルトラマンが好きだった。71年に『帰ってきたウルトラマン』が出てきた時は、ふざけるなと思った。

もちろんその頃は、円谷プロの名前も知らないし、それが東宝の出資によって作られ、テレビ時代が来るとTBSと組んで「ウルトラQ」などを作っていったことも知らなかった。この本はむしろそういった「大人の事情」が中心で、「円谷プロはしょせん下請けの中小企業」と書く孫が、どのように円谷家が経営に失敗し、破綻していったかを内側から書く。

読んでいると、やはり一族経営がダメだったのでは、と思わざるを得ない。祖父の息子や孫たちが変わりばんこに社長となり、それなりに努力するが、結局は失敗してゆく。とりわけ終盤、筆者が中国ビジネスにのめり込み、破産してゆくさまは痛々しいとしか言いようがない。

最後に筆者は書く。「祖父や父が偉大過ぎたのか、我々が凡庸過ぎたのか、それとも特撮からアニメ、CGへという時代の変遷に押し流されたのか、この三十年間余の多くのできごとを振り返ると、自責と後悔の苦い思いに、心が押しつぶされそうになることもあります。/私は今、映像の世界から完全に足を洗い、ブライダル会社の衣装を運ぶ仕事で忙しく働いています」

何ともつらい文章だが、一族の興亡を内側から淡々と書いたこの本は、今後貴重な資料になるのではないだろうか。筆者が私と同世代だけに、妙に親近感を覚える。

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