何とも不思議なトロント国際映画祭:その(2)
昨日は4本を見た。フランス映画1本、イタリア映画2本、フィリピン映画1本だが、どれもなかなか見ごたえがあった。フランスは、パトリス・ルコントが英語で撮った「約束」A Promise。
舞台は1910年代のドイツだが、すべて英語。ある鉄鋼王のもとに秘書として雇われた男と、社長の若い妻との許されない恋愛を描く。製作はフランスとベルギーだが、鉄鋼王がアラン・リックマンで、その若妻がレベッカ・ホール、秘書はリチャード・マッデンという豪華キャスト。
いささか大時代がかったメロドラマかと思ったが、今世紀初頭のヨーロッパをよく再現しており、若い二人の恋愛が丁寧に描かれている。リチャード・マッデンとレベッカ・ホールの息の詰まるような関係が、効果的な手持ちカメラを使った流麗なカメラワークで語られる。久しぶりにかつての『髪結いの亭主』などを思い出させた。
イタリアは2本とも巨匠の作品。一本目はジャンニ・アメリオの「勇敢な男」L'intrepido(英語題:A lonly man)で、“禿の名優”アントニオ・アルバネーゼがありとあらゆる仕事に挑戦する毎日を描く。とにかく、工事現場、レストラン、ピザ屋、クリーニング、スタジアムの掃除、花売り、老人介護など、肉体労働に果断に挑む。そんななかで、出会った若い女や、音楽で生きようとする息子、そして別れた妻(サンドラ・チェッカレッリがはまり役)が描かれる。現代社会で生きることの難しさを、どこか夢幻的なタッチで描いた秀作。
もう一つは、エットレ・スコラの「フェリーニと名乗るのはいかに奇妙なことか:スコラが語るフェリーニ」。てっきりスコラがまた一つフェリーニのドキュメンタリーを作ったのかと思ったら、これがなかなか手の込んだ作品だった。彼らが若い頃に知りあって仲良くなったあたりから、半分は役者を使って劇映画のように見せ、そこに当時の映像やフェリーニの映画を混ぜてゆく。上映後、プレス上映なのに拍手が起こったのも理解できる、暖かい心のこもった映画だった。
このイタリア映画2本は興行は難しいかもしれないが、来年のイタリア映画祭にはぴったり。フィリピン映画はブリランテ・マ・メンドーサの「SAPI」で、悪魔祓いの取材をするテレビチームが、だんだん悪魔に取りつかれてゆくさまを、いささかホラータッチで描く怪作。フィリピン社会に潜む呪術的要素がたっぷりで、見ていて怖くなった。女性のあそこから蛇の頭が出てきた時は、心底驚いた。
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