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2013年9月 4日 (水)

フランス人が見た美輪明宏

『美輪明宏ドキュメンタリー~黒蜥蜴を探して』を劇場で見た。個人的には美輪の自信たっぷりな感じが何となく苦手だが、フランス人が監督をしたというので興味が湧いた。

見てみると、これがなかなか良くできている。パスカル=アレックス・ヴァンサンという若い監督だが、「よく勉強しましたね」と言ってあげたい感じだ。とりわけ戦後日本映画史の中に美輪を位置づけて説明しようとする、強い意思が感じられる。

冒頭は深作欣二監督の『黒蜥蜴』のシーンから始まる。68年のこの映画は90年代にフランスで公開されたという。仏語のナレーションで、なぜ美輪はアキヒロという男性の名前なのか、美輪とは誰なのかと興味を持ったいきさつが語られる。

半分は美輪へのインタビューだ。考えてみたら、三島由紀夫や寺山修司、深作欣二といった日本の中でもちょっと危ない系譜の芸術家たちに気に入られ、仕事を共にしている。最近だと、宮崎駿の『もののけ姫』や『ハウルの動く城』に声の出演をしたり、北野武の『TAKESHI'S』にも出ている。

とりわけ、今は亡き深作へのインタビューや宮崎との撮影シーンのメイキング映像が興味深かった。美輪は黄色の髪でイッセイの赤や青のプリーツの服を着て、自信満々で自分の話をするし、横尾忠則などが美輪を称えてもあまりおもしろくない。

むしろ深作や宮崎が自由に語っているアーカイブ映像の方が、躍動感がある。ドキュメンタリーというのは、撮影中に何か驚きというか、予期せぬものが出てくるから面白いのだが、今回のために撮られた映像にはそれがない。美輪は全く揺るがないからだ。

美輪の話には、フランスをはじめとして外国のオペラ歌手や俳優、作家の名前が次々と出てくる。前世はフランス人だったという美輪が仏語で歌うピアフの「愛の賛歌」が、妙に感動的だ。どこか演歌みたいな、和洋混交の居直り感がいいと思った。フランス人はあれを聞いてどう思うのだろうか。

最初に映画史をよく勉強していると書いたが、1968年頃に大島渚を始めとする新しい映画の作り手たちが出てきた、という類の間違いというか単純化し過ぎた部分は何箇所かある。それにしても63分にうまくまとまっていて「良くできました」。

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