« 何とも不思議なトロント国際映画祭:その(4) | トップページ | なんとも不思議なトロント国際映画祭:本日はお休み »

2013年9月16日 (月)

何とも不思議なトロント国際映画祭:その(5)

これがアップされる頃にはもう映画祭は終わり、観客賞なども発表されているはずだが、「何とも不思議な」と書いたからには、その不思議さをもう少し説明しておきたい。前に書いた通り、この映画祭にはコンペがない。

つまり、監督や批評家や俳優などからなるプロ集団が「評価」して賞を出すシステムがない。代わりにあるのは、観客であり、ビジネスである。トロントは、この2つが見事に融合した新大陸型の新しいタイプの映画祭に見えた。

1976年に始まったこの映画祭は、もともと「映画祭の映画祭」Festival of Festivalsと呼んでいた。つまりカンヌを始めとするほかの映画祭で出た映画を、カナダの観客や北米の映画関係者に見せるのが目的だった。従ってワールド・プレミア(世界初上映)などは最初から狙っていなかった。コンペをやると、国際プロデューサー連盟の規約で他のコンペに出した作品は選べなくなるが、これならいい映画なら何でも選べる。

ところがこの10年で、北米のマーケットを狙う世界中の映画関係者が集まる場になった。例えばヨーロッパ映画を日本人に売る場合でも、かつてのベネチアではなく、トロントで決まるようになってきた。それに伴って、トロントを世界初上映に選ぶプロデューサーも増えてきた。日本の配給会社もここ数年はベネチアにほとんど行かなくなった。トロントには、今年日本から50人以上の関係者(監督やプレスを除く)が来ているという。

今年は288本が上映されて、世界初上映が146本、国際プレミア(自国外初上映)が19本、北米プレミアが103本。長編では9割がそのどれかに当たるという。最近は「ガラ」という枠を設けて、レッド・カーペットを始めた。だんだんここのガラに選ばれたり観客賞を取る映画が、アカデミー賞を取るケースが増えてきた。

マーケットはないが、ここに出せばカンヌなどのマーケットと違ってお金をかけずに多くの関係者に見せることができる。プレスと業界向けに上映された映画は、すべて一般観客も見ることができるので、業界関係者は北米の観客の反応もわかる。

賞やレッド・カーペットやプレス重視は欧州のような身分社会にふさわしい。ここでは観客とビジネスに力点を置いて北米らしい映画祭として、うまく機能している感じがする。1985年に映画祭を始めた東京も、真似るべきはこちらではなかったのだろうか。

|

« 何とも不思議なトロント国際映画祭:その(4) | トップページ | なんとも不思議なトロント国際映画祭:本日はお休み »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/58192391

この記事へのトラックバック一覧です: 何とも不思議なトロント国際映画祭:その(5):

« 何とも不思議なトロント国際映画祭:その(4) | トップページ | なんとも不思議なトロント国際映画祭:本日はお休み »