肩すかしの『タモリ論』
最近売れているという樋口毅宏著『タモリ論』を読んだ。タモリは、高校生の時から好きだった。大学生の時は、「笑っていいとも!」や「タモリ倶楽部」を毎日見ていた。それまでのテレビと違う、度を越したバカバカしさや冷めた感じが好きだった。
それからは、たまに実家に帰った時に「タモリ倶楽部」を見て、「まだやってるんだ」と驚くくらいだろうか。いまさらタモリに思い入れはないが、その実像を知りたいと思った。
ところがこの本は、単なるファンの思い出話で、それもタモリと同時にたけしやさんまのことが延々と書かれていて、いわば筆者にとっての30年の個人的テレビ史のようなものだ。私はタモリの毎日とか、有名な博多時代とかがもっとわかるかと思ったが、そういう知識的な部分はない。その意味では全く肩すかしをくらった気分。
この本を読んで「笑っていいとも」や「タモリ倶楽部」が1982年に始まったことを知った。私はまさに大学生だった。
筆者は私より10歳下だから、小学校高学年だろう。だから私よりも、もっと克明に思い出が残っているのだろう。「およそ日本で生まれ育った人間で、「いいとも!」と人生を切り離して語ることなど不可能というものです」と書くのだから。
いくつかおもしろい指摘があった。タモリの話ではないが、俳優としてのたけしは、「泉谷しげると内田裕也をなぞっているというのが僕の持論です」。なるほど、そういう気もする。そして高倉健も加える。そうかなあ。さらに監督としてパクった作品を町田智浩の文章も引用しながらいろいろ挙げているが、これはあまり同意できない。
さんまが有名になったのは、「オレたちひょうきん族」の「タケちゃんマン」のライバル、「ブラックデビル」を演じたことがきっかけというのは、知らなかった。最初この役は高田純次で、病気かケガの代役でさんまが起用されたという。「現在のさんまがいるのは、ある意味、高田純次の功績といえます」。本当かな。
私が「いいとも!」で一番記憶しているのは、たけしが田中康夫を突き倒したシーンだ。「偉そうなことを言うな」と突き倒された田中は、「お前なんか芸能界にいられなくしてやるからな」と言った記憶がある。もちろん田中が知事や国会議員になるはるか前の話で、たけしも監督ではなかったはずだ。ところがこの本にはこのことが触れられていなかった。それが一番残念だった。
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