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2013年9月20日 (金)

謎のブエノスアイレス:その(2)

昨日、25年前に泊まった「ホテル・パンアメリカーノ」の話をしたが、このホテルをめぐってまたおかしなことが起きた。このホテルはブエノスアイレスが世界に誇るオペラ座「テアトロ・コロン」の向かいにあるが、運よくそこで行われるコンサートのチケットを入手した。

オペラ座の付属芸術大学生による無料のコンサートだったが、とにかく1908年に作られた「最後のオペラ座」と言われるテアトロ・コロンに入れるというので、喜んで出かけた。国際会議に来た6名でボックス席へ。パリのオペラ座よりも小さく、アーチ形にグルリと回る小部屋のような座敷席が中心で何とも豪華な感じ。

問題は、その後食事をすることになってから。私が得意そうに「25年前に日本大使館に招待されたいいレストランがある」と言うと、オーストラリア人夫妻とロシア女性1名、シンガポールの若手1名がついてきた。

「ホテル・パンアメリカーノ」のすぐそばに、そのレストランはあったはずだ。例によって名前も住所もわからない。とにかくまたホテルに向かって歩き出した。10分ほどのはずだが、ホテルはいつまでたっても現れない。そのうえ、女性2人はいろいろな店を見ていて、何ともノロノロついてくる。私は何度も立ち止まってイライラした。

30分ほど歩いて、現地の人に聞いてみたら、全く逆の方向に歩いていることがわかった。確かにホテルの大きな看板を目指して歩いたのに、どこかで間違ってしまった。まるでカフカの『城』みたいだ。みんなに全く逆に歩いたことを謝ると、ロシア人女性が急に不機嫌になって、「私が探す」と言い始めた。

結局は、そのターニャさんが別の高級ホテルに飛び込んで教えてもらったレストランに行った。私の25年前の記憶は、またおかしな結果を生んだ。レストランはなかなか良かったが、どうも私は気分が悪い。ワインの選択や支払いの方法を巡ってターニャさんと口論する始末で、何とも気まずかった。

人間の記憶に頼ると、ろくなことはない。ところで、昨日書いた「アテネオ書店」の有名な方にも行ってみた。正確には「エル・アテネオ・グラン・スプレンディド」書店=Libreria El Ateneo Gran Splendidで、本当にアーチ形の劇場をそのまま本屋にしていた。平土間に本棚が並び、舞台はカフェで貴賓席は読書室。

ブエノスアイレスには、時代遅れの優雅さがある。古い本屋やカフェや劇場がやたらに多く、私には夢のような街だ。

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