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2013年10月16日 (水)

今年も山形に来た:その(3)

もうとっくに山形から東京に戻っているが、忘れないうちにそのほかの数本について書いておく。コンペが『祖国か死か』と『空低く大地高し』、クリス・マルケル特集が2本半。なぜかいずれも「政治的」な映画だった。

『祖国か死か』は、ロシアのヴィタリー・マンスキー監督が現代のキューバを描いたもの。そこに住む中年や老人が次々と描かれるが、彼らは古いキューバのダンス「ルエダ・デ・カシーノ」のメンバーだ。通りも建物も汚れていて、車もオンボロ。ネットも携帯もスマホもないが、人々は幸せそうだ。

カメラはまるで銀残しのような色あせた映像で、街並みや人々の日常をきちんと見せてゆく。恐らくは旧ソ連にも東欧にも社会主義ならでは良さがあったに違いない。この牧歌的な世界は早晩なくなるだろう。そんなことを思わせる映画だった。

『空低く大地高し』は、タイの若手ノンタワット・ナムベンジャポンがカンボジア国境に住む人々を描く作品。人々は赤シャツ派(タクシン支持)と黄シャツ派(反タクシン)との闘争や、プレアヴィヒア寺院を巡るカンボジアとの戦いを淡々と語る。そこから見えてくる人間存在の本質。

クリス・マルケルは世界各地を巡り、リアルでありながらシニカルな視点で語る。『ある戦いの記録』(60)は、建国後12年たったイスラエルを見せる。一見理想の国のようで、どこかおかしな感じが出ている。

『不思議なクミコ』(65)は、東京オリンピックの時の東京を、20代の女性クミコの視点から語る。おそらく当時にしては相当自由な発想の彼女の、フランス語の語りがいい。『シェルブールの雨傘』や『去年マリエンバードで』の日本のポスターが写り、その音楽が流れる。

そういえば、彼女の本名は村岡久美子で、ユニフランスの駐日代表だったマルセル・ジュグラリス氏の秘書を務め、その後パリに住んだという。2006年ジュグラリス氏が書いた回想録に文章を寄せているが、まだお元気だろうか。

『また、近いうちに』(67)はフランスの労働組合を撮ったもので、途中までしか見られなかった。

いつも山形の時期は結婚式などの用事が重なって、2、3泊しかできない。それでも毎回、行きたくなる。まさに「また、近いうちに」A binetot, j'espere。

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