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2013年10月 8日 (火)

サウジアラビアの映画に涙する

中近東の映画は、イラン映画やエジプト映画、パレスチナの映画を除くとめったに見ない。今回サウジアラビアの映画を初めて見た。12月14日公開のハイファ・アル=マンスール監督の『少女は自転車にのって』で、サウジアラビア初の女性監督という。

さらに「初」は続く。サウジアラビア国内ですべて撮影され、すべての役柄をサウジアラビアの俳優が演じた初めての長編映画という。そんな初めて尽くしなのになかなかおもしろい映画で、ラストには涙が出てしまった。

物語は、小学生のおてんば娘ワジダが、男の子が遊んでいる自転車が欲しくなり、買うためにコーラン暗唱コンテストに挑む、というある意味たわいないもの。ところが見ていると、そこに少女や母親や女性教師たちの置かれた立場が見えてきて、どんどんおもしろくなる。

ワジダは自分だけバスケット・シューズを履いて、耳にはピアスを付けている。外を歩く時もスカーフを被ろうとしないし、近所の少年アブドゥラと一緒に遊んだりで、いつも校長先生や母親に注意される。

校長先生は生徒には厳しいが、自分は赤い唇を塗り派手なイヤリングをしていて、家に泥棒が入ったと父親が騒いだら、実は恋人だったという噂も流れている。母親は男の子ができないために夫の心が離れてゆき、第二夫人と結婚するというので悩んでいる。

もちろん女の子が男の子と2人だけで遊ぶことも、自転車に乗ることも論外なのだが、アブドゥラは自分の自転車をワジダの家の二階に持ち込んで自転車の乗り方を教え、「いつか結婚しよう」と言う。その楽しさといったら。

一方で母親はショッピングセンターで真っ赤なドレスを買うのにトイレで試着するとか、夫が友人を連れて家に来ても母親は料理を作って後始末をするだけで友人と会うことさえできないとか、とんでもない女性蔑視の細部も出てくる。

少女が自転車に乗りたい、それだけの映画なのに、最後には少女の勇気と母親の愛に圧倒されてしまった。イスラム教についてずいぶんくわしくなった気がしたが、スタッフを見ると、撮影も編集も美術もすべてドイツ人のようだ。ドイツとの合作ということで、こうした自由な映画作りが可能になったのだろうか。


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