東京国際映画祭は変わったのか:その(9)
昨晩、東京国際映画祭の受賞結果を知った時は、市ヶ谷のチュニジア大使館にいた。『ウィ・アー・ザ・ベスト』がサクラグランプリというニュースをスマホで見て、唖然とした。しかし考えてみたら、国際映画祭の結果はいつもこんなものだ。
今回の結果では、ほかに『オルドス警察日記』の受賞が納得いかなかったが、私が気に入った作品の多くが受賞した。
授賞式に出ずにチュニジア大使館に行ったのは、映画祭の特別招待部門で上映された『アデル、ブルーは熱い色』のアブデラティフ・ケシシュ監督を囲む夕べに誘われたから。『クスクス粒の秘密』などで天才ぶりを発揮した監督を近くで見たいと思った。
その会の挨拶でケシシュ監督は、初来日だが日本はすばらしいと述べた後に、突然小津安二郎の礼賛を始めた。小津は哲学者であり、彼の映画には人生のすべてがあると。チュニジアで小津の回顧上映をすべきだとも。
その後直接話すと、彼は小津は世界一の監督だと思うという。ジャン・ルノワールやロッセリーニより遥かに上らしい。彼は6歳でチュニジアからフランスに移住しているが、高校生の時にニースで『東京物語』を見た時以来のファンらしい。明日は鎌倉の小津の墓に行くと行っていた。
チュニジア大使館では、何とも繊細な魚介のクスクスが出た。最近では日本でもクスクスを出す店があるが、これほどおいしいクスクスを日本で食べたのは初めて。
その後、東京国際映画祭でのパーティに1時間遅れで出た。既にクロージング特有のはじけた感じが広がっていたので、トップの椎名さんやアジア映画部門の石坂さんとも気楽に話すことができた。石坂さんは学生時代からの仲なので「『オルドス警察日記』はプロパガンダ映画に見えたが、中国政府からの圧力で入れたのではないか」と直撃すると、「それはないが、中国映画にくわしい人からの批判はあった」とのこと。
これで東京国際映画祭については、いったんおしまい。この映画祭がどう変ったかどうかは、WEBRONZAにきちんと書く予定。
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