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2013年10月 3日 (木)

『ポルトガル、ここに誕生す』は秀逸のオムニバス

だいたい、数名の監督が短編を作るオムニバス映画に傑作は少ない。中途半端だったり、意味不明だったり。ところが、カウリスマキ、コスタ、エリセ、オリヴェイラによる『ポルトガル、ここに誕生す ギマラインス歴史地区』は秀逸だった。

去年の東京フィルメックスで上映されたが見逃していた。大学に送られてきた小さなチラシを見て無性に見たくなり、久しぶりにイメージ・フォーラムに行った。

まずはアキ・カウリスマキの「バーテンダー」。彼の映画の常連男優が、バーテンダーの一日を演じる。壁は真っ青に塗られ、夜になると青や緑や赤が目立つ。まさにカウリスマキの世界だが、そこにファドが流れ、ラテン系の客たちが集まってきて魚のスープなどを作りだすと、フィンランドともル・アーヴルとも違う「濃い匂い」が広がる。

夜になってピシッと着替えて、赤いカーネーションを持ってバス停に誰かを迎えに行く。バスは着くが彼女はいない。叩きつけられた花束。やはりカウリスマキ。

2本目はペドロ・コスタの抽象劇「スウィート・エクソシスト」。鉄に囲まれたエレベーターの中で黒人のヴェントゥーラは、鉛のように動かない兵士と心の対話をする。退屈だが、深遠なのはいつものコスタと同じ。

ビクトル・エリセの「割れたガラス」は4本の中で一番感動的だ。1845年にできて2002年に閉鎖された紡績工場の食堂に、かつてそこで勤めた人々が次々に現れてそれぞれが思い出を語る。冒頭に出てくる、ガラスの割れた工場の内部のショットの美しさに息を飲む。

工場で知り合った男と結婚しようとして、結婚式の当日に相手が一文無しだとわかって、飛び出してパリに行った女。フランス人の恋人もできたが、自分がメイド扱いされているのがわかって帰国し、また工場で勤めたという。ある老女は、「幸福」はわからないが「喜び」ならわかる、と哲学的なことを言う。

10名ほどが語った後に、両親も祖母も工場で働いたというアコーディオン弾きが現れて、その音楽に合わせて食堂に集うかつての人々の写真を映し出す。顔、顔、顔。

マノエル・デ・オリヴェイラは、観光客が英語のガイドに導かれてギマライインス地区を回る様子をシニカルにユーモラスに描く。これは10分ほどで、エリセの作品は40分ほどか。あえて長さを統一しなかったのが、オミニバス成功の理由かもしれない。よく考えたら、4人の監督はみなどこかで会ってじっくり話したことがあった。

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