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2013年11月 6日 (水)

タノヴィッチ映画のあざとさと面白さ

ダニス・タノヴィッチの映画は『ノーマンズ・ランド』(2001)も『美しき運命の傷痕』(05)も、わざとらしい。もっと言えばあざとい。しかしどれもおもしろい。来年1月に公開の新作『鉄くず拾いの物語』は、それらにくらべてもさらにあざとい。

話は、ロマ族の女性セナダが、保険証を持たず高額な手術代が払えないために、手術を受けられないというもの。演じているのは実際にそういう目にあった夫婦や子供たちだ。もともと監督がこの話を新聞記事で見つけて、本人たちを使って9日間で撮り上げたという。

以上がチラシに載っているので、見始めると何だかわざとらしい気がして居心地が悪い。それでも夫が妻を連れて車で病院に行き、2度も断られる場面を見ているとだんだん感情移入してくる。うまいのは、車から見える風景や病院の様子だ。

巨大な工場からは煙突が何本も立ち、夜も煙がもくもくと出ている。あるいは海岸沿いの寂しい風景。病院で騒ぐ子供たちと医者や看護婦の冷たい態度。ふさぎ込む妻。

車が動かなくなって隣人の車を貸してもらったり、義理の妹の保険証を借りたり。もともと仕事がなく、ゴミ捨て場で鉄くずを拾ってお金に代える生活だ。電気代を払わず電気が止められると、動かない自分の車を解体して鉄くずとして売って電力会社に払いに行く。

まさに貧困の極致だが、カメラはこの家族に寄り添うように優しく描き出す。最後に少し希望が見える感じで終わって思わずほっとした。

払えなかった手術代は980マルクだったが、配給会社の人に聞くと日本円で6万円くらいだという。自分の車を解体して94マルクだから6000円弱。何ともたまらない。ヨーロッパにこんな貧困があるとは。近くにいい身なりの人々がいくらでもいるのに。

その後、竹橋の東京国立近代美術館でジョセフ・クーデルカ展の内覧会に行ったら、膨大なロマ族の写真があって驚いた。映画に出てくる妻にそっくりの女性もいた。この展覧会については後日書く。

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