反医学を考える
いわゆる健康法の類は信じない。昔、2年ほど入院していたことがあって、まわりの人々が祈祷も含めていろいろな健康法を試していたが、本当に効いたのを見たことがなかった。それ以来、一応現代医学を信じることにしている。
それでも年を取り、成人病が出始めると、またいろいろ考える。2年ほど前から始めたのは果物と野菜のジュース作りだが、これで少し体重が落ちて確実に体の調子が良くなった。
最近買ったのは、近藤誠著『医者に殺されない47の心得』。副題が「医者と薬を遠ざけて、元気に、長生きする方法」で帯には「病院に行く前にかならず読んでください」。この著者は、時々週刊誌に「がんは切らずに治る」とか「抗がん剤は効かない」とか「検診は百害あって一利なし」と書いている人だ。
何となく怪しげな印象を持っていたが、読んでみると予想以上に真っ当だった。彼は主に外国の論文を引用しながら、現代の病院が実は患者の寿命を縮めていることを述べる。例えば病院に満足してよく病院に行くグループの方が、5年間の追跡調査で死亡率が26%高かったという類。
あるいは日本では薬漬け医療で医者が儲かる仕組みになっていることを述べて、高血圧やコレステロールの基準値がここ数年で下がった理由とする。長い間高血圧の基準は160以上だったが、2000年に140、08年から130になったという。すると降圧剤の売り上げがこの20年で6倍になり、1兆円を超えた。
そうして血圧やコレステロールを薬で下げると、数値は改善しても早死にするリスクが高まることを論文や症例から説明する。抗がん剤も同じで、がんのしこりを一時的に少なくするだけで、がんを治したり延命には役立たず、つらい副作用を起こし、寿命を縮める。
最後まで読むと、この著者が救急の時以外は病院に行かず、自然に任せて死ぬこと、つまり自然死を望んでいることがわかる。医者としての経験と研究から、その方が長生きでき、それ以上に幸せな人生を送れるという確信からきたものだ。一番最後には、「いっさい延命治療をしないでください」から始まる彼の遺書がある。これはかなり強烈。
つまり、この本は首尾一貫している。だからといって私が今年から人間ドックを止めることにはならないが、数値に一喜一憂することは少なくなるだろう。先日も住んでいる区からがん検診のお知らせが届いて、大腸と前立腺の検査をしてきたばかりだが。
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