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2013年11月23日 (土)

本についての本

最近は少なくなったが、手に取って買いたくなる本がある。ウンベルト・エーコとジャン=クロード・カリエールの対談集『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』がそうだった。黒の表紙に白抜きで文字が書かれ、ページの上に真っ青な色が塗ってある。

そして小型で分厚く、秘密の箱のようだ。題名も題名だから、いよいよ神秘的に見えた。ちなみに仏語の原題はN'esperez pas vous debarasser des livres.=「本から解放されると期待しないように」。だいぶニュアンスが違う。

筆者の2人は、ヨーロッパではアート系インテリの代表選手。エーコは『記号論』などで有名な哲学者でありながら、『薔薇の名前』などの小説も多い。カリエールはルイス・ブニュエル監督の晩年の作品の脚本家として知られ、大島渚やゴダールなどとも組んでいる。最近ではキアロスタミの『トスカーナの贋作』の脚本を手がけ、映画にも出ていた。

2人とも博覧強記の愛書家として知られ、とりわけ稀覯本と呼ばれる16世紀以降の珍しい本の収集で有名らしい。後半に、エーコは蔵書は5万点、うち稀覯書は1200冊で、カリエールは蔵書が3、4万冊で古書が2000冊という。この対談はそれぞれの書庫を訪ねながらパリとミラノで交互に行われたらしい。その様子を想像するだけで楽しい。

一番おもしろいのは、エーコが「これらを全部読んだのですか」という質問に対して、読んでいないが中身はわかると答えるところ。その理由は「書物から波動のようなものが伝わってきた」とか「その本について触れている別の本をたくさん読んだ」などの屁理屈ばかり。

するとカリエールは「観たと思っていた映画を、本当に観たんだっけと思うことがあります。もしかしたら、テレビで部分的に観たのかもしれないし、それについて書いてある本を読んだのかもしれない」。こうなると私にもよくわかる。

そういえば、友人の新聞記者が、本棚に並べた本は一冊も読んでいないが、「自然と中身が匂ってきて身につく」と言っていたのを思い出した。本を読む行為も、その記憶も、しょせんあやふやなものだ。

話をこの本に戻すと、ここには本をめぐる楽しいエピソードが満載で、文明に関する深い考察が散りばめられている。ちなみに彼らの結論は、本はなくならないが、インターネットはなくなるかもしれない、というもの。

私はとにかく本を買う。街を歩くといつの間にか2、3冊買っている。この本を読んで、まだまだ自分は初心者だと思った。

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