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2013年11月 1日 (金)

久しぶりのフィルムセンター

清水宏の特集以来休館をしていたフィルムセンターが再開したので、行ってみた。「よみがえる日本映画 vol.6 東宝編」で、見たのは木村荘十二監督の『純情の都』(1933)。別に傑作ではないが、いろいろな意味でおもしろかった。

まず、プリントがきれいだった。もっと後の小津の『一人息子』(36)などより、ずっといい。最初に「PCL製作・提供」と出てくるが、これは東宝の前身の一つ、写真科学研究所で、トーキー映画のために作られた会社。だからやたらに歌や音楽が出てくるが、音声の状態が極めていい。

内容はモボ、モガたちのたわいない騒動だが、その気取り具合が何ともおかしい。主人公のみちこ(千葉早智子)は、男まさりのきょうこ(竹久千恵子)と都心のアパートSALLY APARTMENTに住む。その向かいにはみちこに憧れる画家が住んでいる。朝はパン屋にカゴを下してパンを買う。壁にはディートリヒの『恋の凱歌』(33)のポスター。窓の外には時計台。

2人は健康往来社という出版社のタイピストだが、みちこは社長のセクハラにあって、飛び出す。みちこはいつも和服だがきょうこは洋装で、自分を「ボク」と呼ぶが、徳川無声演じる社長は「君たちはまさか同性愛じゃないだろうね」。みちこも本当は画家が好きだが、それを言い出せずにいつの間にか会社のきどった先輩に身を任せてしまう。

古川緑波が支配人のキャバレーのシーンでは「明治チョコレート」の看板が大きく写り、画家はみちこをモデルに明治チョコレートのポスターを描いて採用される。あるいは遊び人のきょうこは仲間と「スポーツランド」でゴーカートやボーリングに興じる。こちらはチラシによれば浅草松屋の屋上にあった施設らしい。こんなタイアップが楽しい。

冒頭が都会の朝のスケッチで、列車が走り、店のシャッターが開き、時計台の鐘が鳴る。『ベルリン大都会交響曲』みたいだ。わずか2日ほどを描いた映画だが、ほとんどがセットで憧れの「都会生活」を作りだしている。もともと「ムーラン・ルージュ新宿座」の芝居をもとにしたものらしい。バスからの風景として実際の銀座が少し写るが、着ている服が映画とあまり変わりがなかったのに驚いた。

これが昭和8年で、これから日本が軍国主義へ向かうのが信じられないくらい能天気な1本。

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